カテゴリー: 健康情報

  • 日本人の生活に潜む低体温化


    〜現代人をむしばむ「冷え」の正体とその改善法〜


    導入:低体温は現代病?

    かつて日本人の平均体温は36.8℃前後とされていました。しかし近年は「平熱が35℃台」という人が増えています。

    医学的には「35.5℃以下」を低体温と呼ぶことが多く、免疫力低下・代謝低下・生活習慣病リスク上昇など、体に様々な悪影響を及ぼします。

    低体温は単なる体質ではなく、**現代の生活習慣や社会環境によって加速している“現代型不調”**とも言えるのです。


    第1章 日本人に低体温が増えている背景

    1-1. 運動不足と筋肉量の低下

    • 筋肉は体の熱産生の約40%を担う器官。
    • デスクワークや車移動中心の生活で活動量が減少。
    • 特に太ももや背中の大きな筋肉が衰えると基礎代謝が下がり、体温も低下。

    1-2. 食生活の変化

    • 昔の日本食:米・魚・野菜中心 → 高タンパク・高ミネラル
    • 現代の食事:パン・パスタ・加工食品 → 炭水化物過多、栄養バランスの乱れ
    • 特にタンパク質不足は筋肉量低下につながり、体温を下げる要因に。

    1-3. 冷暖房の普及

    • 夏は冷房、冬は暖房 → 外気温の刺激を受けにくい
    • 自律神経が鍛えられず、体温調整力が弱まる
    • 冷房の効いたオフィスや電車で「夏でも冷え性」という人が増加

    1-4. 睡眠不足とストレス

    • 自律神経の乱れは血流やホルモンバランスを崩し、体温低下を招く
    • スマホやパソコンによるブルーライトも体温リズムを狂わせる

    第2章 低体温が引き起こす健康リスク

    2-1. 免疫力低下

    • 体温が1℃下がると免疫力は30〜40%低下すると言われる
    • 風邪をひきやすい、感染症にかかりやすい

    2-2. 代謝低下と肥満

    • 基礎代謝が下がり、同じ食事量でも脂肪がつきやすくなる
    • 「冷え性なのに太りやすい」人は低体温の典型例

    2-3. 生活習慣病リスク

    • 血流が悪くなり、動脈硬化や高血圧を招く
    • 糖代謝も落ち、糖尿病のリスク増加

    2-4. 精神的な不調

    • 脳の血流低下で集中力・思考力が低下
    • 自律神経失調症、うつ傾向との関連も指摘

    第3章 日本人に特有の要因

    3-1. 低カロリー志向とダイエット文化

    • 「痩せたい」意識が強く、特に女性は栄養不足になりやすい
    • 脂肪も熱産生に必要で、極端な制限は低体温化を招く

    3-2. 塩分制限と味覚の変化

    • 日本は高血圧対策として減塩が進む一方、塩不足による低血圧・低体温のケースも
    • 必要以上にミネラルを避けることで体の調整機能が落ちる

    3-3. 高齢化社会

    • 高齢者は筋肉量が減少しやすく、基礎代謝低下
    • 平熱が35℃台の人が増加

    第4章 低体温チェックリスト

    • 平熱が35.5℃以下
    • 手足の冷えが強い
    • 汗をかきにくい
    • 疲れやすい、風邪をひきやすい
    • 顔色が悪い、肌が乾燥しやすい
    • 集中力が続かない

    👉 複数当てはまる場合は「隠れ低体温」の可能性が高い。


    第5章 低体温を改善する生活習慣

    5-1. 食生活の見直し

    • タンパク質:肉・魚・豆腐・卵を意識的に
    • 鉄分・亜鉛・マグネシウム:血流改善に不可欠
    • 温かい料理(鍋・スープ)を取り入れる

    5-2. 運動習慣

    • 大きな筋肉(太もも・背中)を鍛える筋トレ
    • 有酸素運動で血流改善
    • 週2〜3回の軽い運動でも効果大

    5-3. 入浴

    • 38〜40℃の湯船に10〜15分
    • 半身浴や足湯も効果的

    5-4. 生活リズムの改善

    • 睡眠を7時間確保
    • 朝日を浴びて体内時計を整える
    • スマホは寝る前1時間控える

    第6章 漢方や生薬の活用

    • 当帰(とうき):血流を促進し女性の冷えに効果
    • 桂皮(けいひ/シナモン):体を芯から温める
    • 生姜(しょうきょう):胃腸を温め食欲を改善
    • 附子(ぶし):強い冷え症に使われる(専門家の指導必須)

    👉 西洋医学では治療対象になりにくい「冷え性」も、漢方では重要視される。


    第7章 低体温と社会・経済への影響

    • 体調不良による 労働生産性の低下
    • 医療費増大(生活習慣病や感染症のリスク増)
    • 健康寿命の短縮

    👉 低体温は個人の問題にとどまらず、社会全体に影響を及ぼす。


    まとめ

    • 日本人の平均体温は年々下がっており、低体温化は現代病の一つ
    • 原因は運動不足、食生活の乱れ、冷暖房の影響、ストレスなど複合的
    • 免疫力低下・肥満・生活習慣病リスク上昇といった深刻な影響がある
    • 改善には 食事・運動・入浴・睡眠・漢方 など日常生活の見直しが必須

    冷えは「仕方ない体質」ではなく、生活習慣で改善できる問題です。

    自分の体温を意識することが、健康長寿への第一歩となります。



  • 体が温まる・冷え性に効く生薬のすべて

    体が温まる・冷え性に効く生薬のすべて


    〜漢方の知恵で巡りを改善し、温かい体を取り戻す〜


    導入:なぜ冷え性に「生薬」が効くのか

    冷え性は現代人の大きな悩みの一つです。

    特に女性に多く、冬場だけでなく夏の冷房環境やストレスによっても引き起こされます。

    病院の血液検査では異常が出にくいため、「体質の問題」 と片付けられてしまうことも多いですが、漢方では古くから「冷え」は重要な体質指標とされ、気・血・水の巡りが滞っている状態と考えます。

    そこで注目されるのが、体を内側から温める生薬

    生薬は単独でも効果を発揮しますが、多くは漢方薬として組み合わせて用いられ、体の根本から冷えを改善していきます。


    第1章 漢方における「冷え性」の理解

    1-1. 漢方でいう「冷え」

    • 陽気不足:体を温めるエネルギー(陽気)が不足している
    • 気血両虚:血の巡りが悪く、末端まで栄養や熱が届かない
    • 瘀血(おけつ):血の流れが滞り、局所的な冷えや痛みを伴う

    1-2. 冷えのタイプ

    1. 全身性の冷え:基礎代謝が低く、常に体温が低い
    2. 四肢末端型の冷え:手足が特に冷たくなる
    3. 下半身冷え型:腰から下だけ冷える
    4. 内臓型冷え:お腹が冷えて消化不良や下痢になりやすい

    👉 漢方では体質ごとに異なる処方を組み立てるのが特徴です。


    第2章 体を温める代表的な生薬とその効能

    2-1. 桂皮(けいひ)=シナモン

    • シナモンの樹皮を乾燥させたもの
    • 温裏散寒(おんりさんかん):体を芯から温め、寒さを散らす
    • 血行を良くして手足の冷えや月経痛を改善
    • 使用例:桂枝湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯

    2-2. 生姜(しょうきょう/乾姜)

    • 生姜を乾燥させたものを「乾姜(かんきょう)」と呼ぶ
    • 発汗解表・温中止嘔:体を温め、胃腸を整え、吐き気を抑える
    • 冷えによる胃腸不良・食欲不振に効果
    • 使用例:生姜湯、小青竜湯

    2-3. 附子(ぶし)

    • トリカブトの塊根を加工して毒性を除いたもの
    • 回陽救逆・補火助陽:極度の冷え、低体温、四肢の冷感に強力な効果
    • 非常に温める力が強いため、重度の冷え症や慢性疾患に用いられる
    • 使用例:真武湯、八味地黄丸、附子理中湯
    • 注意点:強い作用があるため、必ず医師や専門家の指導下で使用

    2-4. 呉茱萸(ごしゅゆ)

    • ミカン科植物の果実
    • 温中散寒・降逆止嘔:胃腸を温め、冷えによる頭痛や嘔吐を改善
    • 特に「呉茱萸湯」は、冷えによる片頭痛や月経痛に使われる

    2-5. 当帰(とうき)

    • セリ科植物の根
    • 補血活血:血を補い巡りを良くする → 血行改善で冷えを防ぐ
    • 女性の冷え・生理不順に多用される
    • 使用例:当帰芍薬散、加味逍遥散

    2-6. 肉桂(にっけい)

    • シナモンの近縁種で、桂皮よりもさらに温め作用が強い
    • 腎陽を補う → 冷えを伴う腰痛や関節痛に用いられる

    2-7. 人参(にんじん/高麗人参)

    • 強壮作用があり、体力・基礎代謝を高める
    • 冷えやすい虚弱体質に効果的
    • 使用例:人参湯、補中益気湯

    第3章 冷え性改善に使われる代表的な漢方処方

    1. 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
      • 血行を促進し、女性の冷え・貧血・生理不順に
    2. 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
      • 血行と自律神経の調整に
    3. 真武湯(しんぶとう)
      • 強い冷え、疲労感、むくみがあるタイプに
    4. 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
      • 四肢の冷えが強く、しもやけや生理痛を伴う場合
    5. 八味地黄丸(はちみじおうがん)
      • 加齢による下半身の冷え、頻尿、腰痛に

    第4章 生薬で体が温まるメカニズム

    • 血管拡張作用:桂皮・生姜などが末梢血流を促進
    • 代謝促進作用:人参・附子が基礎代謝を上げる
    • 自律神経調整:呉茱萸・当帰が交感神経を刺激し、体温調節を改善
    • ホルモンバランス改善:当帰が女性ホルモンに似た作用を持ち、冷え性に多い月経関連症状を和らげる

    第5章 実践的な取り入れ方

    5-1. お茶・スープとして

    • 生姜湯、桂皮茶、当帰入りスープなど
    • 日常的に取り入れると体質改善に役立つ

    5-2. 漢方薬として服用

    • 市販薬や病院処方で体質に合わせた漢方を服用
    • 特に「附子」など強い薬は自己判断NG

    5-3. 食養生と組み合わせ

    • 温野菜、根菜類、香辛料を取り入れる
    • 冷たい飲み物・甘い物を控える

    第6章 注意点と副作用

    • 附子:過量で中毒症状あり → 必ず専門家の指導下で
    • 桂皮:体質によってはのぼせや発汗過多を招く
    • 当帰:妊娠中は医師に相談を
    • いずれも 「自分の体質に合うかどうか」 が重要

    まとめ

    • 冷え性は「陽気不足・血行不良・自律神経の乱れ」から起こる
    • 桂皮、生姜、附子、呉茱萸、当帰、人参などの生薬が体を内側から温める
    • 漢方薬として処方されるとより効果的
    • 体質改善のためには、生活習慣・食事との組み合わせが必須

    冷えは放置すると不妊症や生活習慣病にもつながるリスクがあります。

    生薬の力を取り入れ、根本から温まる体質改善を目指すことが大切です。