体が温まる・冷え性に効く生薬のすべて

生薬

〜漢方の知恵で巡りを改善し、温かい体を取り戻す〜


導入:なぜ冷え性に「生薬」が効くのか

冷え性は現代人の大きな悩みの一つです。

特に女性に多く、冬場だけでなく夏の冷房環境やストレスによっても引き起こされます。

病院の血液検査では異常が出にくいため、「体質の問題」 と片付けられてしまうことも多いですが、漢方では古くから「冷え」は重要な体質指標とされ、気・血・水の巡りが滞っている状態と考えます。

そこで注目されるのが、体を内側から温める生薬

生薬は単独でも効果を発揮しますが、多くは漢方薬として組み合わせて用いられ、体の根本から冷えを改善していきます。


第1章 漢方における「冷え性」の理解

1-1. 漢方でいう「冷え」

  • 陽気不足:体を温めるエネルギー(陽気)が不足している
  • 気血両虚:血の巡りが悪く、末端まで栄養や熱が届かない
  • 瘀血(おけつ):血の流れが滞り、局所的な冷えや痛みを伴う

1-2. 冷えのタイプ

  1. 全身性の冷え:基礎代謝が低く、常に体温が低い
  2. 四肢末端型の冷え:手足が特に冷たくなる
  3. 下半身冷え型:腰から下だけ冷える
  4. 内臓型冷え:お腹が冷えて消化不良や下痢になりやすい

👉 漢方では体質ごとに異なる処方を組み立てるのが特徴です。


第2章 体を温める代表的な生薬とその効能

2-1. 桂皮(けいひ)=シナモン

  • シナモンの樹皮を乾燥させたもの
  • 温裏散寒(おんりさんかん):体を芯から温め、寒さを散らす
  • 血行を良くして手足の冷えや月経痛を改善
  • 使用例:桂枝湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯

2-2. 生姜(しょうきょう/乾姜)

  • 生姜を乾燥させたものを「乾姜(かんきょう)」と呼ぶ
  • 発汗解表・温中止嘔:体を温め、胃腸を整え、吐き気を抑える
  • 冷えによる胃腸不良・食欲不振に効果
  • 使用例:生姜湯、小青竜湯

2-3. 附子(ぶし)

  • トリカブトの塊根を加工して毒性を除いたもの
  • 回陽救逆・補火助陽:極度の冷え、低体温、四肢の冷感に強力な効果
  • 非常に温める力が強いため、重度の冷え症や慢性疾患に用いられる
  • 使用例:真武湯、八味地黄丸、附子理中湯
  • 注意点:強い作用があるため、必ず医師や専門家の指導下で使用

2-4. 呉茱萸(ごしゅゆ)

  • ミカン科植物の果実
  • 温中散寒・降逆止嘔:胃腸を温め、冷えによる頭痛や嘔吐を改善
  • 特に「呉茱萸湯」は、冷えによる片頭痛や月経痛に使われる

2-5. 当帰(とうき)

  • セリ科植物の根
  • 補血活血:血を補い巡りを良くする → 血行改善で冷えを防ぐ
  • 女性の冷え・生理不順に多用される
  • 使用例:当帰芍薬散、加味逍遥散

2-6. 肉桂(にっけい)

  • シナモンの近縁種で、桂皮よりもさらに温め作用が強い
  • 腎陽を補う → 冷えを伴う腰痛や関節痛に用いられる

2-7. 人参(にんじん/高麗人参)

  • 強壮作用があり、体力・基礎代謝を高める
  • 冷えやすい虚弱体質に効果的
  • 使用例:人参湯、補中益気湯

第3章 冷え性改善に使われる代表的な漢方処方

  1. 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
    • 血行を促進し、女性の冷え・貧血・生理不順に
  2. 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
    • 血行と自律神経の調整に
  3. 真武湯(しんぶとう)
    • 強い冷え、疲労感、むくみがあるタイプに
  4. 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
    • 四肢の冷えが強く、しもやけや生理痛を伴う場合
  5. 八味地黄丸(はちみじおうがん)
    • 加齢による下半身の冷え、頻尿、腰痛に

第4章 生薬で体が温まるメカニズム

  • 血管拡張作用:桂皮・生姜などが末梢血流を促進
  • 代謝促進作用:人参・附子が基礎代謝を上げる
  • 自律神経調整:呉茱萸・当帰が交感神経を刺激し、体温調節を改善
  • ホルモンバランス改善:当帰が女性ホルモンに似た作用を持ち、冷え性に多い月経関連症状を和らげる

第5章 実践的な取り入れ方

5-1. お茶・スープとして

  • 生姜湯、桂皮茶、当帰入りスープなど
  • 日常的に取り入れると体質改善に役立つ

5-2. 漢方薬として服用

  • 市販薬や病院処方で体質に合わせた漢方を服用
  • 特に「附子」など強い薬は自己判断NG

5-3. 食養生と組み合わせ

  • 温野菜、根菜類、香辛料を取り入れる
  • 冷たい飲み物・甘い物を控える

第6章 注意点と副作用

  • 附子:過量で中毒症状あり → 必ず専門家の指導下で
  • 桂皮:体質によってはのぼせや発汗過多を招く
  • 当帰:妊娠中は医師に相談を
  • いずれも 「自分の体質に合うかどうか」 が重要

まとめ

  • 冷え性は「陽気不足・血行不良・自律神経の乱れ」から起こる
  • 桂皮、生姜、附子、呉茱萸、当帰、人参などの生薬が体を内側から温める
  • 漢方薬として処方されるとより効果的
  • 体質改善のためには、生活習慣・食事との組み合わせが必須

冷えは放置すると不妊症や生活習慣病にもつながるリスクがあります。

生薬の力を取り入れ、根本から温まる体質改善を目指すことが大切です。