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肝臓病の種類

      2015/11/24

肝臓病の種類

現在の肝臓病の多くはウイルスを原因とするものですが、もちろんウイルス以外の原因で起こる肝臓病もたくさんあります。代表的なものは、アルコール多飲によるアルコール性肝障害、肥満などメタボリック症候群を背景に持つことが多い脂肪肝、アレルギー体質により発症する薬剤性肝障害、細菌や原虫などの感染による肝膿瘍、自己免疫の異常が原因と考えられる自己免疫性肝炎や原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、遺伝的な酵素欠損による代謝性の病気など様々なものがあります。このページでは、人間ドックなどで指摘されることの多い、アルコール性肝障害、脂肪肝の問題を取り上げます。また、「薬のリスク」である薬剤性肝障害、最
近増えている印象のある肝膿瘍についても考えてみましょう。

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アルコール性肝障害

飲兵衛は嘘つき?

肝炎ウイルスの発見以前は、「肝臓病といえばアルコールが原因」と言われていたくらい、アルコール性肝障害は一般的でした。一方で、「酒は百薬の長」とも言われます。アルコールの持つ二面性を表しているのだと思います。太古の昔から、人間は穀物や果実から発酵させてお酒を造り、楽しんでいたようです。適量を飲めば、愉快になり、楽しいひと時を過ごせます。
けれども、度を越せば、肝臓ばかりか、膵臓や脳も心臓も侵されます。私自身は、それほど飲める方ではないので、お酒好きの人の心境はよくわかりません。私のような下戸の肝臓病専門医は、お酒好きの患者さんには結構厳しいようです。逆に、お酒が好きな肝臓病専門医は、お酒好きの患者さんに比較的寛容なようです。

知人の高橋さんの例:高橋さんは、身長が170センチで、体重が88キロほどありました。お酒は毎日一合から二合くらい飲んでいるという自己申告でしたが、あとで奥様が面会に来られて本当のことをお聞きすると、一升びんが一週間で三、四本空になると教えてくれました。
刑事ではありませんが、医者も疑わしい時には裏を取ります。真実を知るには、やはりご家族にお聞きするのが一番なのです。
どうも長年肝臓病の患者さんを見てきた私の印象では、お酒飲みの患者さんに飲酒量をお聞きすると、突然「嘘つき」になることが多いようです。血液検査の値から見ても、ありえないくらい少ない飲酒量を申告します。高橋さんもそうでした。アルコールに敏感に反応するγ‐GTPが1250と正常の20倍も高いのですから「これはあやしいぞ」とすぐにピンときます。お酒をやめろと言われるんじゃないかと心配な気持ちはよく理解できますが、すぐにわかるウソはいけません。
高橋さんは、アルコール性肝障害があり、糖尿病、高脂血症も合併していました。肥満もあるため、一日の摂取カロリーを減らして、体重を落とし、糖尿病や高脂血症のコントロールもしようと相談しました。毎日それだけのアルコールを飲んでいるのですから、アルコールを減らせば、カロリー自体も減り、食生活も改善され、体重も減るだろうと考えて、「お酒をやめましょう」と提案してみました。
しかし、高橋さんは首を縦には振りませんでした。よほどお酒が好きなのです。そこで私は一計を案じて、「じゃあ、お酒か、ごはんか、どちらかやめてください」と提案してみました。
ここまで追い詰めれば、下戸の私の感覚では、「ごはんはやめられないから、お酒をやめます」と答えるに違いないと考えました。ところが驚いたことに、高橋さんは「それではごはんをやめます」とキッパリ即答したのです。さあ、それからが大変でした。まったく予想外の答えが返ってきたので、お酒をやめさせるのにひと苦労もふた苦労もしました。本物のお酒飲みの心を推し量れなかった下戸医者の失敗です。
高橋さんは、長年のアルコールの飲酒により引き起こされたアルコール性脂肪肝でした。アルコール性肝障害の中には、肝臓に線維の増生したアルコール性肝線維症、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変があります。アルコール性脂肪肝もアルコール性肝線維症も、症状に乏しく外見からは鑑別がつきません。せいぜい血液検査で、γ‐GTPが高く、ASTやALTが少し高いくらいです。
注意を要するのは、アルコール性肝炎です。もともとお酒飲みの人が、アルコールを急に多く飲むようになって起こる肝炎です。これは、腹痛、発熱、黄疸、高度の肝機能異常、白血球増多などが出現して大変な状態になり、そばで見ていても重症感があります。一見、急性の胆道感染で重症化しているように見えるので、診断に難渋することもしばしばです。治療が早ければ回復する可能性もあるのですが、さらに重症化して、肝性脳症が出たり、プロトロンビンが低下して出血したり、肺炎を併発したりして死に至ることも珍しくありません。
さらに病態が進行して、アルコール性肝硬変の段階にまで進むと、臨床症状が出てきます。
「酒さ」と呼ばれる赤い鼻になったり、蜘蛛状血管腫が胸や腕や顔面にできたりするのは、一般の肝硬変と変わりありません。さらに進んで、肝機能の維持ができなくなると、腹水が出たり、黄疸が出たりします。また肝性脳症といって、訳のわからないことを言ったり、昏睡に陥ったりすることがあります。
ここまで進行すると元に戻すのにはなかなか苦労しますが、基本的にはアルコールをやめて、一般の肝硬変の治療と同じようにしていきます。脂肪肝や肝線維症のレベルであれば、禁酒により確実に回復が望めます。しかし、禁酒は、一人で試みると困難なことも多く、患者さんを支える家族や、精神科の専門医などの協力が必須です。肝臓だけを見ていれば十分なわけではありません。
この段階でアルコールをやめられた人は、危険は少ないといえます。問題になるのは、それでもお酒をやめられない人です。こうなると、肝硬変が進行します。食道静脈瘤が出現して、大出血を起こしたりすれば生命の危機になります。肝臓病の行きつく先は肝がんで、アルコール性肝硬変でもそれは同じです。この場合は、肝機能自体も悪化していることが多く、治療が困難になってきます。肝がんが発生しなくても、肝硬変が進行してきた場合には、肝機能が維持できなくなり、肝不全という状態になります。肝不全の状態になると、黄疸、腹水、肝性脳症に悩まされることになります。そのような悲惨な状態になる前に、アルコールをやめる機会は何度もあるはずです。その機会を逃さずに、すっぱりやめるのが最善です。アルコール性の病気は原因が明らかなので、悪くなってからの治療よりも予防が大切なのです。

お酒に強い人、弱い人

アルコールを急激に大量に飲むと、血液中のアルコール濃度の上昇により、発揚(明るく陽気になり楽しくなる)、酩酊、泥酔、昏睡と、いくつかの段階をへて、最終的には死に至ることがあります。アルコールが脳に行きわたり、脳の浅いところから徐々に機能が侵され、最終的には延髄にある呼吸中枢が麻痺して死に至るわけです。
人間が摂取する嗜好品には様々なものがありますが、アルコールに対する反応ほど千差万別なものはなく、医師としては興味がつきません。お酒を際限なく飲み続けてもまったく平気な人もいれば、一滴たりともまったく飲めない人、飲むと顔が赤くなる人、青くなる人など、反応には様々なタイプがあります。これは何を意味しているのでしょうか? 当たり前のように聞こえるかもしれませんが、端的にいえば、体質です。親がお酒飲みの人はお酒に強いことが多いし、親が飲めない人はお酒に弱い。親が顔が赤くなる人は、自分も顔が赤くなりやすい。
遺伝が関係するらしいことが示唆されます。
飲んだお酒は、胃および小腸の上部で1?2時間の間に速やかに吸収されます。吸収されたアルコールは、腸管から門脈に入り、肝臓に流れ着きます。肝臓では、肝細胞の中に吸収され、アルコール脱水素酵素、ミクロソームエタノール酸化系、カタラーゼ系という三種類の経路で、アセトアルデヒドに分解されます。通常の状態ではアルコール脱水素酵素が全体の7?8割の分解を担当して、残りの大半をミクロソームエタノール酸化系が担当し、カタラーゼ系はごく少量の分解のみ担当しています。
生成されたアセトアルデヒドは有毒で、そのままの形だと細胞毒になります。アセトアルデヒドはアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)で分解され、毒性のない酢酸に形を変え、最終的には筋肉などの他の臓器で炭酸ガスと水に分解され、代謝が終わることになります。有害なアセトアルデヒドの分解の主力になるのが、六種類あるALDHのうちのALDH2型です。
この酵素の働き具合により、お酒が飲める人、飲めない人、顔が赤くなる人という反応の違いが生まれます。
ALDH2型の酵素が十分に機能する人が、お酒に強い人です。どんなに飲んでも顔色も変わらず、いくらでも飲めます。アセトアルデヒドの分解が短時間で行えるからです。一方、ALDH2型の酵素がまったく働かない人は、お酒が全然飲めない人です。ひと口飲んだだけで、ドキドキして気持ちが悪くなり、倒れてしまいます。アセトアルデヒドがまったく分解できないので、アセトアルデヒドの毒性がもろに出て、いつまでも続いてしまいます。こういう人に一気飲みなどで無理に飲ませると、アルコールの血中濃度が急激に上がって、ひどい場合は死んでしまう危険があります。時々、「今夜は浴びるくらい飲むぞ!」と言う人がいますね。
いくらお酒が強い人でも、一気飲みのように短時間に大量に飲む行為は非常に危険です。厳に慎むべきです。
では、アルコールを飲むと顔が赤くなるのはなぜでしょう? 少しは飲めるという人は、ALDH2型の酵素が、お酒好きの人ほど十分ではないにしても、そこそこ
働いている人です。アセトアルデヒドの分解も、ゆっくりではありますが進めることができます。少しは飲めるという人は、お酒を続けて飲むうちに、この酵素の働きが誘導されて、赤くはなるのですが酒量は増えてきます。
基本的にアセトアルデヒドは、人体に対して毒で、まったく良い働きはしません。ALDH2型の酵素が十分に機能するのは、人種的にみると白人種や黒人種です。そこそこ働いて、顔が赤くなるのはモンゴロイド系に多く、まったく働かない人もモンゴロイド系に多いと報告されています。
以前、アメリカでアルコール関係の医学会があった際にパーティーに出席しました。知り合いのアメリカ人が多く楽しい時間を過ごしたのですが、乾杯のために飲んだ一杯のシャンパンで私は真っ赤になってしまいました。まわりのアメリカ人は、私の赤い顔を見て「フラッシング、フラッシングー」と喜んでいました。アメリカ人はALDH2型の酵素が十分に働くので、赤ら顔になる「フラッシング」が珍しいのです。
筑波大学におられた原田勝二先生によれば、現代の日本人は56%がALDH2型の酵素が十分に働く人、38%がそこそこ働く人、4%がまったく働かない人とのことです。以前、私が赴任していた秋田県は、アルコール消費量がつねに全国トップクラスでした。お酒の消費量
が多い秋田県はこの酵素が十分に働く人の割合が日本一多いところで、じつに県民の80%以上にものぼるそうです。言われてみれば、お酒に強い人が多かった印象があります。遺伝子をみると、その要因が明らかになるのです。この酵素の働きと、お酒の消費量は比例します。そういえば、秋田の宴会では、最初の乾杯はビールでなく日本酒が出てきたりしました。

お酒は肝臓に悪いのか?

アルコールは、急激に大量に飲むと、泥酔を起こしたり、時により呼吸停止を起こしたりして死亡事故につながることもあります。こう言うと、お酒を飲むのは悪ことのように聞こえるかもしれませんが、あの少し飲んだ時の、高揚感、解放感、楽しさは、下戸の私でも捨てがたいものがあります。たまに少量のお酒を飲むことは、それはそれでメリットはあると思います。
しかし、長い期間飲酒を続けると、やはり体に対して悪さをするのは明らかです。少量の飲酒でも悪いことばかりで、まったく良いことはないと言い切る学者もいます。三合、四合ものお酒を連日連夜10年間も飲み続ければ、多くの場合、アルコール性肝硬変になると言われています。これはアルコール依存症の行き着く先で、多くは膵炎(すいえん)、多発性神経炎、せん妄、記憶障害、脳萎縮、てんかんなど、消化器系と神経系の障害が前面に出てきます。高脂血症が出たり、心臓が機能低下を起こしたり、現在報告されているだけで60種類ぐらいの病気の原因になる可能性があります。
また、大量の飲酒は、がんができやすい状態を作っているようなもので、口腔内、咽喉頭部のがんや食道がんなどの大きな要因になっているのは確実です。たとえば、こういう報告があります。お酒をまったく飲まないモルモン教徒の集団は、一般のアメリカ人のがんの死亡率の半分であり、心臓・血管障害の死亡率も半分だそうです。やはりどう見てもアルコールに分が悪そうです。
晩酌にアルコールを20グラム程度飲むくらいなら、「適正飲酒」と言われて、あまり悪さはしないように信じられています。日本酒に換算すれば一合、ビールなら500ミリリットル、ワインならグラスニ杯、ウイスキーならダブルー杯程度が、適正飲酒と言われる目安です。これくらいのアルコールを分解するのに、男性は二時間ほど、女性は三時間ほどかかります。ただし、これは平均なので、体の大きい人(肝臓の大きい人)は速く分解され、体の小さい人(肝臓の小さい女性など)は分解に時間がかかります。さきほど説明したALDHの働き具合によっても変わるので、一応の目安と考えてください。
アルコールの分解過程で生じるアセトアルデヒドは、お酒を飲んだその場では、顔を赤くしたり、心臓をドキドキさせたり、気持ち悪くしたりという、アルコール摂取に伴う不快な反応を引き起こします。では、もっと長期的にみると、どんな反応が起こるでしょうか。これが、お酒飲みの人にがんの発生が多い理由を考えるカギになります。肝臓の細胞は、アルコールやアセトアルデヒドにさらされる時間が長くなればなるほど、遺伝子の異常が起こりやすくなります。そうして長年の間に小さな遺伝子の異常が蓄積されると、最終的に発がんに結び付くようです。とくに、「すぐ顔が赤くなるけれど、お酒はほどほど飲める」という人は要注意です。
アセトアルデヒドの分解に時間がかかる分だけ、がんができやすくなるのです。
さらにアルコールを飲むと、細胞や遺伝子を傷つける働きがある「活性酸素」が多く作られます。この活性酸素も、慢性の粘膜細胞障害から発がんを促進する要因と考えられています。
同じような仕組みで、活性酸素は動脈硬化や高脂血症を作り出すことも知られています。慢性の持続する炎症が諸悪の根源なのです。
アルコールの消費量が増えれば増えるほど、心臓・血管障害が増えることは、様々な統計データにより裏付けられています。ただし、反証もあります。一番有名なのは「フレンチパラドックス」と言われるものです。これは、南フランスの住民を対象にした調査で明らかになったことです。肉など飽和脂肪酸のたくさん含まれる西洋風の食事をして、赤ワインをたくさん飲んでいるのに、心筋梗塞による死亡が少ないというデータです。これを根拠に、赤ワインに含まれるポリフェノールが体に良いということで、一時期、赤ワインがブームになりました。この説が本当に正しいのかどうかは、現在のところ、まだわかりません。遺伝学的な背景を調べたり、もっと長期間データを蓄積して解析すれば、あるいはその正しさが証明される可能性もあります。ただ、現時点でいくつかの反論があるのも事実です。
以上のことを総合して考えてみると、大量の飲酒を長期間続けることが体に悪いことは確実です。これを良いとする根拠は何もありません。結論を出すには少し時間がかかるかもしれませんが、たとえ適正飲酒であっても、長期にわたり習慣にすると注意が必要でしょう。
私の一番のお勤めは、飲酒を習慣にしないことです。親しい人と愉快な時を過ごすために、時々、おいしいお酒を少し飲むくらいが、ちょうど良いのではないでしょうか。
しかし、それくらいでおさまらないのが人間です。体に良くないとわかってはいても、ついつい「もう一杯」と、お酒に手が伸びてしまいます。時を経て十分に熟成した「シャトーマルゴー」の味わいは、下戸の私でも感激しました。悩み深いものです。

飲酒のJカーブ効果

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毎日5合飲めば2週間で脂肪肝に

毎日5合飲めば2週間で脂肪肝に

酒に含まれるアルコール量の計算式

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脂肪肝

肥満と肝臓病
そもそも太ることと肝臓の病気とは関係があるのでしょうか? 私が医学生の頃も、肥満が糖尿病に悪いとか、心臓病に悪いというようなことは言われていましたし、授業でもそう教わった気がします。ただ、肝臓病に関してはどうだったか、ほとんど記憶にありません。
確かに、当時から「脂肪肝」という言葉はありましたし、脂肪肝は太っている人に多く、血液検査をすればASTやALTなどの肝機能検査が異常値を示すことも知られていました。それでも、とくに診断や治療の対象になることはなく、放置されていたというのが実態でした。
当時は、「脂肪肝は肝臓に脂肪が溜まっているだけで、何も悪さをしないから、そのままにしておいてよい」と考えられていたのです。実際、脂肪肝と診断された患者さんは、「外来に来る必要もありませんし、薬もいらないでしょう」と言われていたことが多かったと思います。
それは当時、脂肪肝を研究する人がほとんどおらず、実態もよくわかっていなかったからでもあります。現在のように肥満を示す人口が爆発的に増えていたわけでもなく、医師も研究者も社会全体も、ほとんど注目していませんでした。それは、本当に正しかったのでしょうか?
一部は正しく、一部は正しくないというのが答えです。それでは、謎の深い脂肪肝を、背景となることが多い、肥満の観点から考えていきましょう。

肥満とは何か?
「太る」ということは、体に取り込んだエネルギーを使いきれずに、体内にエネルギー分が脂肪という形で蓄積されている状態を示します。端的に言うと、食べ過ぎ、飲みすぎ、運動不足などにより脂肪が溜まることを言います。肥満の背景には遺伝的要素があることは容易に考えつくことですが、食事・運動など、遺伝子以外の要素も関わることは明らかです。とくに食事の質や量が大きく関わります。
30年ほど前、初めてアメリカに行って、ファーストフード・レストランに入って驚いたことがあります。幾重にも重ねた超特大ハンバーガーと山盛りのフライドポテトを食べながら、1リットル以上もありそうな甘いドリンクを飲んでいる人の、なんと多いことか。2000キ
ロカロリー以上はありそうでした。普通の日本人の食事なら一日分のカロリー数です。アメリ
カでの肥満人口の爆発は、こうした高カロリー食による脂肪と糖質の取りすぎが大きな原因ではないかと思います。このような食事を習慣にしている人の体格を見ると、ほぼ例外なく肥満です。私もハンバーガーは大好きですが、ウエストのサイズを考えるにつけ、なるべく近づかないようにしています。最近は、私がアメリカで見て驚いた超特大ハンバーガーが日本でも売り出され、人気とのことです。考え込んでしまいます。
医学的には「肥満」という言葉はやや漠然とした言葉で、様々な定義があります。日本肥満学会、NIH(アメリカ国立衛生研究所)、WHO(世界保健機関)などから定義が出されていて、それぞれ少しずつ異なります。民族差や地域差などがあるためかも知れません。ここでは、話を簡単にするために、日本肥満学会の定義に従って進めます。
肥満の判定には、世界的な体格の指数である「BMI指標(body mass index)」というものが用いられます。BMIの計算は簡単です。
BMI=体重(キログラム)÷(身長(メートル)の二乗)
という式で計算します。

日本肥満学会では、BMIが25以上の人たちを肥満と定義しています。とくに、BMIが25?30を「1度の肥満」、30?35を「2度の肥満」、35?40を「3度の肥満」、40以上を「4度の肥満」と分類しています。BMIが増えるほど肥満度が上がります。
ならば、BMIは低ければいいのかというと、必ずしもそうではありません。ちょうど良い値というものがあって、BMIが22の人が、死亡率、有病率ともに一番低いと言われています。つまり、肥満まではいかないちょっとぽっちやり型が良いわけです。
近頃なぜ肥満が注目を浴びるようになってきたかというと、欧米、とくにアメリカでこの2、30年来、肥満の人が爆発的に増えていることがあります。さらにわが
国でも、食生活の欧米化により、欧米の後を追うように肥満の人が増えている現状があります。

肥満だと、心臓病、脳血管障害、糖尿病など、様々な病気が明らかに増えることがわかっています。各種のがんにもかかりやすいことは統計を見ると明らかです。肥満は人類の生存にとって明らかにネガティブな側面をもつのです。

「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」

体重が増えて、丸くなってくるのが肥満ですが、肥満のかたちにも特徴があります。一般的には、「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」とに分けて考えられます。この分類はおもに、脂肪がどこに付くかということを元に分類されています。
内臓脂肪型肥満は、お腹の中の腸開腹の周りに大量の脂肪組織が蓄積してくる肥満です。腹部肥満とも言われます。中年の男性に多く、いわゆるメタボリック症候群の中核をなす肥満です。このタイプの肥満は、心臓・血管障害や、脳血管障害、糖尿病、高脂血症、高血圧などの合併症が多く、危険な肥満と言うことができます。
皮下脂肪型肥満は、お尻の周りや下半身を中心に脂肪が蓄えられるタイプの肥満です。おもに女性に多くみられます。このタイプの肥満は、内臓脂肪型肥満と比較して、心臓・血管障害の発生が低いと言われています。とはいえ、肥満していない人に比べれば、それでも高いのですが……。
ご存知のように、肥満の診断としては「メタボ健診」が有名です。肥満症と診断する流れは次のようになっています。まず、ウエストの周囲計測で、男性八五センチ、女性90センチ以上でスクリーニングします。これに該当する場合は、血液検査で中性脂肪が高いこと、善玉コレステロールが低いこと、血圧が高いこと、空腹時血糖が高いこと等の組合わせで、メタボリック症候群と診断されます。放射線CT検査で内臓脂肪面積を計測して、100平方センチ以上あれば、内臓脂肪が明らかに蓄積していると判断します。メタボリック症候群と診断されると、合併症が存在する可能性も高く、将来重大な合併症の発生も考えられるので、治療の対象となってきます.

内蔵脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満

内蔵脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満

脂肺肝は要注意
肥満は様々なメカニズムで起こります。筋肉や皮ドや腸間膜に脂肪がつく以外に、肝臓にも脂肪がつくようになります。この状態が脂肪肝と呼ばれるものです。病理学の先生が肝臓を顕微鏡で精密に調べて、脂肪肝と診断するには、大体、3分の1の肝細胞に脂肪が溜まっていることが目安になります。
脂肪肝は、肝細胞と呼ばれる細胞に中性脂肪が溜まることによって起こる病気です。この節の始めに述べたように、以前は治療の対象にもならず、放置されていました。この病気が最初に注目されるようになったのは、約20年前のことです。当時、肥満の人が爆発的に増え始めていたアメリカでのことでした。放置してもよいだろうと考えられていた脂肪肝の一部に、病状が進行して、肝硬変になったり、肝がんになったりするI群があると報告されたからです。
脂肪肝は、肥満以外にアルコール性の肝臓病の初期に起こることは、昔からわかっていました。
注目を浴びた報告は、アルコールを飲まない肥満者に現れる脂肪肝の一部が進行性の肝臓病であるというショッキングなものでした。非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non‐alcoholic?steatohepatitisoナッシユと読む)と命名されたこの疾患群は、その後、世界中で注目されるようになりました。
NASHは、今後ますます増加すると予想され、これを研究する人も急増しています。様々な統計データを読んでみると、成人人口の約30%は脂肪肝があり、そのうちの10%程度がNASHである可能性があるようです。実際、私たちが外来で見る脂肪肝の患者さんは増加の一途をたどり、NASHを基盤にした肝硬変や、肝がんも増えてきているようです。
大まかに言って、日本の肝がんの原因は、約70?80%はウイルス性、10?20%がアルコール性で、5%くらいがNASH関連と考えられています。今後はウイルス性が減少して、アルコール性やNASHを原因とした肝がんが増えていくものと予想されています。ですから、せっかく受けた健康診断で「脂肪肝」と言われたら放置しないことです。医師と相談することをお勤めします。
脂肪肝には、とりあえずは放置してかまわない脂肪肝と、放置してはいけない脂肪肝があります。脂肪肝は、ほとんど症状もなく、痛くもかゆくもないことが多い病気です。昔はそのまま放っておかれたので、血液検査をする機会もなく、診断を受ける機会も少なかったかも知れません。ただ、最近では、会社などの健康診断でも積極的に検査を実施するようになりました。

見逃してはいけない脂肪肝-NASH

脂肪肝は、アルコール性のこともあれば、特殊な薬の服用により起こることもあります。そこで、患者さんからこれまでの生活履歴を詳細に聞き取ることが重要です。たとえば、アルコールを毎日三合も四合も飲むようであれば、アルコールによる脂肪肝だろうと考えます。実際、多くは、ASTやALTが異常値を示すほかに、γ‐GTPも異常値を示します。そのような場合、アルコール性肝障害として扱い、禁酒の方向に話を進めます。一方、原因としてウイルス、薬剤、アルコールを否定した結果、消去法で残るのを非アルコール性脂肪肝炎と診断する場合もあります。こうして診断された脂肪肝の中に「見逃してはいけない脂肪肝」があります。さきほど説明したNASHという病態が、その「見逃してはいけない脂肪肝」です。二次検診などで私の外来を受診された場合、まずその見分けをします。
NASHの診断は、現在、大きな問題を含んでいます。今のところ、NASHと診断するには、「アルコールを一日20グラム以上飲んでいないこと」が条件になります。アルコール20グラムとは、日本酒で一合、ビール中瓶で一本くらいです。ただし、飲んでいる量を正確に把握するのは患者さん自身も難しいし、なかなか聞き出しにくいものです。さきほど述べたように、私の今までの経験からすると、お酒飲みの患者さんは、飲酒量を少なめに自己申告する傾向があります。血液検査を見れば一目瞭然なのに、「飲んでない」と言う患者さんのいかに多いことか……。診察が終わったあと、家族の方にお聞きすると、その二倍も三倍も飲んでいることがわかり、驚くことしぱしぱです。20グラムというのは微妙な量ですが、一応の目安として設定されています。
もう一つの問題は、NASHと診断するためには、病理学的な診断を必要とすることです。
つまり、超音波検査やCT検査の画像診断と血液検査だけでは確定診断できないということです。局所麻酔をして肝臓に細い針を刺し、肝臓の組織を採取する検査(肝生検)をして、病理の先生に診断をしてもらわないとNASHと診断できないのです。
肝生検は入院が必要ですしなかなか大変なので、日常臨床の場では、単純な脂肪肝やNASHをすべて含めて、「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD:non‐alcoholic fatty liver disease。ナフルドと読む)」という広い概念で示しています。これは病理学的な診断が必要ありません。ウイルス性、アルコール性など明らかな原因が特定されない脂肪肝もすべて含む広い病名で、その中の10?20%がNASHと呼ばれる進行性の脂肪肝となります。私たちの診察室では、NAFLDの中からNASHの可能性が高い患者さんを拾い上げて診断し、もしNASHであった場合は治療を行うことにしています。
NASHの可能性の高い人は、ASTやALTが高いだけでなく、「線維化マーカー」と「フェリチン」という検査項目が異常に出ることが多いようです。線維化マーカーには、P‐m‐P、4型コラーゲン、ヒアルロン酸の三種類があります。これらが異常値を示すような患者さんは、やはり確定診断のために肝生検をお勤めしています。
線維化マーカーというのは、聞きなれない検査項目かもしれません。これは、肝臓の中の線維成分が増えていることを示す印です。最初は、B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性の肝臓病を診断する時に、肝硬変まで進んでいるかどうかを見るための検査項目でした。それが、肝臓に線維が増えている場合、この線維化マーカーが敏感に検出できることから、NASHの診断のための一つの検査項目になりました。単純な脂肪肝ではこのマーカーが異常値を示すことは少ないと考えられています。
もう一つの「フェリチン」という検査項目は、鉄の代謝を表す指標です。フェリチンは本来、鉄と一緒に肝細胞に存在することが多い物質です。理由はまだ詳細にわかっていないのですが、NASHの場合は、鉄の代謝異常が起こり、血中のフェリチンが高く出ることが知られています。また、肝臓の中には鉄が過剰に蓄積していることも知られていて、これが原因の1つとなって活性酸素がたくさん出て、肝細胞障害を起こすこともわかっています。
これは逆に言うと、線維化マーカーやフェリチンが異常値を示さない脂肪肝は、進行性である可能性は少ない、ということでもあります。したがって、線維化マーカーやフェリチンの異常が出ていない脂肪肝は、多くの場合、とりあえず「経過観察でよい」ということになります。もちろん、肥満がある場合は、食事・運動に注意しないといけません。

どんな治療法がある?

このような経過を経て、NASHの危険のある脂肪肝の患者さんは、肝生検をすることになります。肝臓の組織を顕微鏡で詳細に調べると、脂肪のたまり具合、炎症の程度、線維の増え方の程度などを組み合わせて最終的にNASHであるかどうか、病気の進行度を理解することができます。
最終診断がつくと治療に向かいますが、この治療法がなかなか一筋縄ではいきません。たとえば、細菌感染をしたら抗生物質というように直線的に治療法が決まるのですが、NASHの場合は今のところ確立した特効薬がありません。NASHの病態は、メタボリック症候群を背景に持つことが多く、肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化など、様々な合併症を伴うことが多いためです。
一般にコンセンサスを得ているのは、食事療法と運動療法です。「脂肪分、糖分は控えめに」「野菜をたくさん食べましょう」「毎日一万歩あるくなど、適度に運動しましょう」と指導されます。実際に見ていると、体重を五?七%落とした患者さんの多くは、脂肪肝による肝機能異常がなくなります。そこで私は、「半年で体重を5%落としましょう」と指導しています。体重が落ちるにつれて、肝機能が正常化し、高脂血症、高血圧、高血糖が改善するのが目に見えてきます。私たち医師も嬉しいし、患者さんも満足度が上がります。改善した患者さんをリバウンドさせず、体重を維持させるには、外来に時々来ていただいて、血液検査や超音波検査を定期的に受けていただくのがコツのようです。
ただ、優等生の患者さんはそれでよいのですが、なかなか体重を落とせない患者さんもいます。実際は、そのような患者さんが多いのです。では、どうしたらよいのでしょう? そういう場合は、患者さんに合わせて、薬剤投与をします。高脂血症の患者さんには脂肪を下げる薬、糖尿病の患者さんには糖尿病治療薬、血圧の高い患者さんには降圧剤、肝臓の炎症が強い患者さんには肝庇護剤を出します。これらの薬を組み合わせて出すこともあります。幸いなことに、これらの薬の多くは、肝臓の線維化を抑える作用や、脂肪の吸収を抑える作用もあるので、様々な作用を期待して投与します。
NASHやNAFLDに有効と考えられる薬には様々なものがあります。今後は、大規模な臨床試験を経て、有効な薬が次々に明らかになり、楽に治療できるようになるのが理想です。
ただし、「一錠のめば、いくら食べても太らない薬」というような、都合の良い薬はできないでしょう。最近は、肥満を治療するために、外科手術で胃袋を縮小させたり、胃袋の入り口を細めたりすることもあるようです。大相撲のある元力士は、肥満解消のため外科手術を受け、かなりの減量に成功したそうです。超肥満で減量がなかなかうまくいかず、NASHなどの合併症のある患者さんには、これも一つの治療法なのかもしれません。幸いなことに、日本には手術が必要なほどの超肥満の患者さんはそれほど多くありません。
私は前任の秋田大学時代に、脂肪肝に興味をもち研究を始めました。秋田大学の堀江泰夫先生、鈴木聡先生らとチームを組み、NASHの病態を知るための実験を行いました。がん抑制遺伝子(がんの発生を防ぐように働く遺伝子)の一つを人工的に遺伝子操作して、これが働かないようにしたマウスを作りました。がん抑制遺伝子を働かなくしたので、当然、がんが出来てくることは予想していました。観察していると案の定、脂肪肝ができ、さらにNASHのような病態に進行して、肝臓に炎症や線維化が起こり、最終的に肝がんが出来ました。人間のNASHの研究をするには、実験動物が必要なので様々な実験モデルがありますが、実際に発がんまで進むモデル動物は少なく、注目されました。
その一方で医者たちは、モデル動物によって得られた知見を、どうにかして臨床の場に生かしたいと考えます。そこで、病態の解明を進めるかたわら、NASHに対する治療薬の研究も始めました。私が現在の順天堂大学に赴任してからも、堀江先生のチームは研究を続けて、いくつかの薬の評価に成功しています。基礎的な研究がさらに進歩して、臨床に結びつく成果があがることを期待しています。

NASHをけっして見逃さない

私は秋田大学にいるときから、脂肪肝について講演する機会がよくあります。基礎的な研究と臨床的なデータを組み合わせて、「危険な脂肪肝と、経過観察でよい脂肪肝とを見極めて、進行を食い止めよう」と話して歩いています。私の講演を参考にして治療を始めた先生方もおられ、患者さんを紹介してこられる先生もいらっしゃいます。
現在、私がいる順天堂大学は東京の真ん中にあり、便利なためか、日本全国、さらに世界各国から患者さんが来ます。自分で来られる患者さんもいれば、かかりつけの先生の紹介で来られる患者さんもいます。そんな患者さんの中で、ある地方の消化器内科の開業医の先生が、私の講演を聴いて気になったのでと言われて、訪ねてこられたことがあります。医師の方が直接訪ねていらっしゃるのは、とても珍しいケースです。
データを拝見すると、典型的なメタボリック症候群の上に出来たNAFLDでした。線維化マーカー、フェリチンが高く、さらに肝がんの腫瘍マーカーであるAFP、PlvKA‐nが上昇しており、NASHから進行してきた可能性が強く示唆されました。超音波検査、CT検査と進めるうちに、六センチほどの大きさの肝がんが発見されました。幸いにも、手術をして完全にがんを取り切れたので事なきを得ましたが、このケースについては私自身、考えさせられました。消化器内科の医師でも、危険な脂肪肝NASHについての認識がまだまだ薄いのではないかと思ったのです。
ウイルス性肝炎では、進行すると肝がんが発生する確率が高い。そこで、まめに超音波検査をしたり、CT検査をしたりして、早期発見に努めていきます。
しかし、私たちの診察室にこられるNASHの患者さんの中には、患者さん自身だけでなく、医師自身も注意が及んでいないために、まったく放置されて、検査を全然受けていなかったのではと思われる方も、時々いらっしやいます。別の何らかの機会に検査を受けて、偶然、大型の肝がんが発見され、治療のために私たちの診察室に来られるわけです。NASHに関しては、もっともっと危険性を訴えていかなければと思っています。NASHはけっして見逃してはいけません。

薬剤性肝障害

どんな病気?
病気の治療のために服用したり、健康の増進のために服用したりする薬が原因で肝臓病が起こることを薬剤性肝障害と言います。多くの薬は、効き目を示した後、肝臓に入り、肝細胞で分解されて効き目がなくなります。これを「薬物代謝」と言います。このように、肝臓は薬物代謝の中心を担っているために、皮膚や造血器などと同じく、薬物による障害がしばしば起こるのです。
原因となる薬は、何でも考えられます。処方をされる頻度が高いためか、抗生剤、鎮痛解熱剤、精神科・神経料用薬剤などが、肝障害をよく起こす薬剤として知られています。他にも、市販の風邪薬、健康食品、循環器用薬剤、消化器用薬剤、漢方薬、ビタミン剤など、多岐にわたります。2008年の日本肝臓学会の際に行われた、薬剤性肝障害の全国規模の実態調査によると、この病気は年ごとに増加傾向にあり、注意が必要と言われています。
薬剤性肝障害と言っても、個人個人で薬剤の反応が異なるため、症状も様々な出現の仕方をします。ASTやALTなどの肝細胞逸脱酵素の上昇が強く出るタイプで、ALP、γ‐GTP、ビリルピンなどの胆道系酵素の上昇が比較的低いこともあれば、ASTやALTなどの上昇は比較的低く、おもにALPやγ‐GTPなどの上昇が強く、明らかな黄疸を呈してくる例もあります。
薬剤性肝障害には男女差はなく、年齢でみると五〇歳以降に起こることが多いようです。50歳を過ぎると、薬をのむ確率が高くなるためと考えられます。薬剤性肝障害は、薬をのみ始めて一回で起こる人もいますが、繰り返しのんで起こる人もいます。薬をのんで二週間以内に肝障害が出る人が約六割ですが、一、ニカ月過ぎてから出てくる人もあります。薬をのんでいるといつでも肝障害を起こす可能性はあるのですが、薬をのみ始めた時期が危ないということです。

なぜ起こる?
では、なぜ薬剤性肝障害が起こるのかを考えてみましょう。薬による肝障害は大きく分けて次の二つに分類されます。
(1)薬剤などの中毒により起こる障害
(2)特異体質により起こる障害
まず、(1)の薬剤などの中毒により起こる障害を説明しましょう。
「薬剤の中毒」という場合には、ある薬剤を服用したすべての人に、体質に関係なく同じような中毒症状としての肝障害が起こることをさします。また、薬をたくさんのめばのむほど、強く肝障害が起こります。これを「用量依存性」と言います。この二つの条件が必須です。代表的な薬剤は、アセトアミノフェンです。薬剤だけでなく、アマニタファロイデスという毒キノコによって中毒性肝障害が起こることも、ヨーロッパでは昔から知られています。
アセトアミノフェンは風邪薬の主成分としても市販されていますので、気をつけなくてはいけません。決められた量を守ってのめば大変に有効で問題ありませんが、用量依存性で障害が出るので要注意です。大量に服用すると肝障害が起こります。アセトアミノフェンは、欧米では、劇症肝炎の原因の一つになっています。
ちょっと専門的になりますが、このアセトアミノフェンは、肝細胞の中にある「チトクロームP一450」という薬物代謝酵素で分解されます。分解され無毒化される前に「活性中間体」というものになります。この活性中間体は毒性をもち、量が少なければ問題はないのですが、多すぎると肝細胞を傷つけることがあるようです。
なぜ薬剤性肝障害が起こるのか。その第二は、「特異体質」です。特異体質により起こる肝障害は、薬物に対する反応が一般の人と異なるために起こる障害です。おもにアレルギーによって起こります。これは、特定の人にのみ起こるため、なかなか予測することができません。
私自身の例や、北島先輩の例で示したように、普通は良い薬でよく効くのですが、体質に合わないと肝臓がやられてしまうのです。人によっては薬疹といって皮膚に発疹が出たりします。
ほとんどの人は薬の良い作用だけで終わるのが、特定の体質を持った人には例外的に障害が起こるのです。動物実験による確認がなかなかできないのが現状で、中毒性肝障害が予測できるのに比べ、病気になってから初めてわかるような本当にわかりにくい病気です。

薬剤性肝障害の症状は? 診断と治療は?

薬剤性肝障害の患者さんが、来院されたときに訴える症状は多彩です。決め手に欠けることが多いのは、一般の急性肝炎と同様です。倦怠感(だるさ)が36%、食欲低下が26%、黄疸が28%、その他に発熱、皮疹、体のかゆみなどが症状として見られます。
しかし、こうした症状は急性肝炎や慢性肝炎にも見られるもので、これだけでは薬剤が原因であるとは診断できません。そこで医師は、薬の服用歴をしつこく聴き取ります。性交渉などによるウイルス感染をする機会があったかどうかなども聞きます。あんまり根掘り葉掘り聞かれるので、ちょっと嫌な気持ちになるかも知れませんが、我慢して素直に申告してほしいと思います。そのような詳細な病歴聴取が、正しい診断と治療の第一歩なのです。
血液検査の結果は、一般の急性肝炎と同様に、AST、ALTの上昇に加え、ALP、γ‐GTPの上昇、ビリルビンの上昇などが特徴です。このタイプの肝炎は、薬によるアレルギーが原因であることが多いため、直接的な確定診断ができません。たとえば、C型肝炎ウイルスが血液中に確認できれば「C型肝炎」と確定することができるのですが、これはそういうわけにはいかないのです。そこで結局、消去法で診断を進めていくことになります。つまり、肝臓に関して考えうる病気を列挙し、病歴や血液データ、画像診断データをもとに、合わない病気を消去していくのです。そして、もし最後に薬剤性肝障害だけが残ったら、そこで初めて「これは薬剤性肝障害である」と診断することができるのです。
そのためにはまず、A型、B型、C型、E型などのウイルス感染を示す検査はすべて陰性を示す必要があります。そして、アルコール性肝障害や自己免疫性肝炎なども否定されなければいけません。もし黄疸が見られる症例ならば、胆石や胆管がん、膵頭部がんなどの病気も、超音波検査やCT検査によって否定される必要があります。それらの病気がすべて否定されたところで、薬剤性肝障害が疑わしいと診断されることになります。肝障害の原因と考えられる薬剤の使用を中止することで、症状や検査成績が改善することは、原因薬剤を考えるうえで重要な所見です。また、原因となった薬の特定も重要です。原因となった薬の繰り返しの服用は、肝炎の重症化、劇症化につながる場合があり、避けなければなりません。薬の特定のためには、「リンパ球幼若化試験」という試験が有効な場合があります。
この試験では、薬剤性肝障害の患者さんの30?40%が陽性に出ます。陽性と出れば、原因薬剤が特定できたことになります。
ただし、中毒性肝炎の場合は陽性に出ません。陽性に出る可能性があるのは、特異体質性の薬剤性肝障害の中でも、アレルギーにより起こる肝障害だけです。そのため、リンパ球幼若化試験が陰性でも、他のタイプの薬剤性肝障害の可能性は残ります。
薬剤性肝障害では、ほとんどの例は、原因薬剤の使用を中止すると速やかに肝障害は回復していきます。予後は良好な病気です。最良の治療は、疑わしき薬の服用を素早く中止することです。肝障害の程度が悪ければ、入院のうえ点滴をしたりします。これは一般の急性肝炎と同じです。その際、劇症肝炎に進行する例が稀にあるので、医師はその早期発見が重要になります。劇症肝炎の場合には特殊な治療が行われます。

肝膿瘍

最近は、肝膿瘍の患者さんをしばしば見かけます,肝膿瘍とは文字どおり、肝臓の中に膿のたまる病気です。腸管や胆管系に住んでいる細菌が原因で引き起こされることが多い病気です。
一般の健康な人は、細菌が腸管から胆管を経由して肝臓に感染することはほとんどありません。感染するのは、糖尿病やがんなどの基礎疾患を持っていて、免疫能が低下している患者さんがほとんどです。原因がわからない熱が出て受診される方もあれば、近くのかかりつけの先生から紹介されて受診される方もいます。
肝膿瘍は、超音波検査やCT検査などで調べると容易に診断することができます。ふつうは点滴をして抗生剤を投与すると良くなることが多いのですが、膿の塊が大きい場合や、抗生剤の効きが悪い時は、体外から直接肝臓の膿の塊に管を刺して排膿することもあります。ふつうの細菌ではなく、赤痢アメーバーが原因で起こった肝膿瘍もあります。発熱、腹痛、肝腫大があります。CT検査をしてみると、肝右葉に8センチほどの膿瘍があったため、早速、抗生剤を点滴したのですが、あまり効果が認められませんでした。そこで、体外から管を刺して排膿を行ったところ、赤さび色の液体が出てきました。一般の細菌性の肝膿瘍の場合は、黄白色、いわゆる「膿の色」が多いのですが、赤さび色の膿は独特なので、すぐに赤痢アメーバー原虫による膿瘍だと気がつきました。採取した膿砺波は冷やすことなく、速やかに検査室に運び、顕微鏡で観察すると赤痢アメーバーを見ることができます。赤痢アメーバーによる肝膿瘍は、メトロニダゾールという抗原虫薬を投与すると、多く
の場合、次第に治っていきます。
赤痢アメーバーの患者さんを見ると必ず思い出す友人がいます。20年来の付き合いで、ある老舗の会社の重役さんです。会社の仕事だったか、個人旅行だったか定かではありませんが、何年か前に奥様を同伴して中国を旅しました。北京から入り、敦煌に出かけ、莫高窓などを見て歩き、ご機嫌な一日を過ごしたそうです。夕食ということになり、地元の人たちが行く屋台街に出かけました。薄暗い屋台街で、あまり清潔そうではないけれども、賑わっているし、別の日本人観光客のグループが楽しそうに宴会をして盛り上がっているし、「大丈夫だろう」と決心して食事をしたそうです。普段から用心深く、健康には人一倍気を遣う人ですから、生水、生ものは食べず、羊や鳥などの串焼きや野菜などを食べ、水の代わりに、生温かい中国のビールを飲みました。
さて、楽しい食事も終わり、ホテルに帰って休んだのですが、それからが大変でした。夜半より激しい腹痛とともに、下痢が始まりました。朝まで一睡もできず、日本から持参した抗生物質と下痢止めをのんで夜を明かしたそうです。次の日は、敦煌から西安に飛行機で移動する予定だったので、お腹を抱えながら飛行機に乗り込みました。離陸するや否やトイレに駆け込み、着陸態勢に入るまでの一時間ほど居座っていたそうです。西安に着くとすぐに病院を紹介してもらい、即入院。立派な病室で抗生剤の点滴を受けました。下痢止めと思しき薬を処方され、半信半疑ながらもその薬をのみ、少し良くなったのを見て退院。お腹を抱えながら北京に
移動しました。
北京では北京ダックで有名な店で歓迎の晩さん会が聞かれたそうですが、食べたくても何も食べられません。いや、食べなくて正解だったでしょう。下痢のときは絶食が基本です。あんなおいしい北京ダックなどを食べていたら、さらに悪化していたところです。人間は食べてはいけない時には、食べられないようになっているのです。翌日、腹痛は軽くなりつつも、下痢はまだ続きました。しかもよく見てみると、便の色が少し変わっています。ちょっと赤みが入っているし、イチゴゼリーのような粘液質に変わってきました。さすがに心配になり、成田に帰り着くや、私のいる病院に直行しました。「イチゴゼリー状の下痢を見たらアメーバー赤痢」は医学生の常識です。早速、便検査が行われ、赤痢アメーバーの確定診断がなされ、メトロニダゾールを処方され治癒したわけです。
さて、無事治ったのは万々歳なのですが、私としては心配です。赤痢アメーバーの潜伏期間は多くは2?3週間です。となると、感染場所は敦煌ではなく、出発前の日本ではないかという疑問がわきます。この感染症は、便中に排泄された原虫が、生の食べものや水などを介して、口から他人の腸に入りこみ、腸炎を引き起こします。ところが、腸炎で済めばよいのですが、しばしば大腸、直腸に住み着いてしまうことがあります。こうなると厄介で、症状があまりないため放置され、慢性化することがあります。すると、赤痢アメーバーが腸管粘膜内から、門脈内に入り込み、肝膿瘍を引き起こすことになります。また、排便のたびにその便は、新たな感染の源にもなりうるのです。
肝膿瘍は、最近では、男性同性愛者の性感染症として多いことが、つとに知られています。
この場合は、肛門‐ロ感染です。そこで、「ひょっとして……」と私は考えてみました。後日、呼び出して友人に尋ねてみたところ、そのようなことはないとのことで、ひと安心しました。
この友人に関して言えば、中国で起こった腹痛・下痢は、一般の細菌性の腸炎と赤痢アメーバーによる腸炎が合併していたのではないかと思います。

原発性胆汁性(げんぱつせいたんじゅうせい)肝硬変

原発性胆汁性肝硬変は、中年以降の女性に多い、進行すると黄疸を呈する肝臓病で、肝臓の中の胆管が消失してしまうのが特徴です。免疫の異常で起こる可能性も指摘されていますが、いまだ原因不明です。難病に指定されていて、日本では約5000名程度の患者さんがいると推定されていますが、欧米では日本より約四倍の頻度があります。
7?8割の患者さんは、症状のないことが多く、健康診断の時などに、偶然、肝機能異常を指摘され発見されることが多い病気です。残りの二?三割の患者さんが進行性で黄疸が出たりします。自覚症状としては、皮膚のかゆみを訴える患者さんが多く、これを主訴に来院して発見されることもあります。 この疾患は、血液検査で、胆道系酵素(ALP、γ‐GTPなど)やビリルビンの上昇を特徴とし、ASTやALTなどの肝細胞障害を示す肝機能異常はほとんどないか、ごくわずかの場
合が大半です。健診などで偶然に発見される患者さんは、ほとんど症状もなく、胆道系酵素の上昇だけのことがしばしばです。このような患者さんでも、くわしく調べてみると、血液検査で抗ミトコンドリア抗体が陽性に出て、免疫グロプリンの中のlgMが高値を示します。こうなると、典型的な原発性胆汁性肝硬変が疑われ、肝生検をして確定診断をつけます。原発性胆汁性肝硬変が発見された患者さんは、多くは有効性が確認されているウルソデオキシコール酸の投与を受けることになります。昔から熊の胆の主成分として肝臓病に良いと言われていたもので、日本で開発され広く使われてきた薬です。副作用もほとんどなく、この病気にはよく効きます。7?8割方の患者さんは、この薬の内服だけで十分で、血液検査の異常が改善されて心配はありません。
ただし、なかには病気が進んでしまう患者さんがいます。免疫抑制剤やステロイド剤など様々な薬が使われますが、黄疸が進行してくると治療に難渋します。肝不全が進行して、腹水が出たり、肝性脳症が出たり、食道静脈瘤が出たりします。こうなってしまうと、内科的な薬物療法ではまったく歯が立たなくなります。内科医は黄疸が進行性になってきた段階で、肝臓移植を頭に浮かべます。劇症肝炎などとは異なり、進行がゆっくりなので、患者さんとご家族が希望すれば、移植の準備が落ち着いてできます。

肝臓移植には、脳死肝移植と生体肝移植の二つの方法があります。どちらも有効な治療法で、成功したときには劇的に良くなります。以前、私が関係していた病院で、この病気で何年も通院していた小田さんという患者さんがいました。発見当初は、無症候性ということで胆道系酵素の上昇があるだけでした。そこで、ウルソデオキシコール酸の投与で様子を見ていました。ところが、数年が経過した頃から、黄疸が出現して、ステロイド剤の投与をしたり、免疫抑制剤の投与をしたりして治療を続けました。これらの新しい治療は少し効果を示し、一時的には黄疸が改善しましたが、しぱらくすると再度、黄疸が進行してきました。ピリルビンが30以上という高度な黄疸です。こうなると内科的にはもう打つ手がなく、主治医はほぼあきらめかけているような状態でした。
私が小田さんを診るようになったのは、ちょうどそのような折のことでした。内科的治療は限界で「肝臓移植以外はない」ということで、私は脳死肝移植の登録を勧めました。当時も今も同じですが、ドナー(臓器提供者)不足は深刻です。小田さんの命が燃え尽きるのと、移植の順番が回ってくるのとどちらが早いか。そういう一刻を争う状態でした。小田さんが半年間生きられる可能性は10%もなかったのですから……。小田さんも、主治医も、私も、つらい日々を過ごし、移植センターからの連絡を待ち続けました。
その電話は突然でした。移植センターから、「ドミノ肝移植の症例があるのですが、いかがでしょうか」という連絡が入ったのです。ドミノ肝移植は非常に珍しい肝臓移植です。「家族性アミロイドポリニューロパチー」という病気があります。先天的な遺伝子異常があり、肝臓で作られるアミロイドが正常ではなく、徐々に異型のアミロイドが体中に蓄積して、知覚障害や運動障害など様々な神経症状を発現するようになる病気です。この患者さんはアミロイドの沈着がひどくなり、生命を脅かす状態になってきたので、身内の人から肝臓の一部を提供してもらう生体肝移植を受けることになりました。
移植センターが私たちに意思確認の連絡をしてきたのは、その家族性アミロイドポリニューロパチーの患者さんは、アミロイドの異常以外、肝機能はまったく正常だったからです。つまり、生体肝移植で取り出したその患者さんの肝臓は、アミロイドの異常以外はまったく正常なので、命が燃え尽きそうになりながら待機している小田さんに緊急避難的に提供できるわけです。アミロイドは肝臓で作られる物質ですが、アミロイドポリニューロパチーの神経症状が発現するまでには何十年という時間がかかります。したがって、小田さんにその患者さんの肝臓を移植しても、すぐにアミロイドポリニューロパチーになる可能性はないと考えられます。年齢も同じ60歳前後。好条件がそろっていました。しかも、取り出した肝臓は二つに分けて移植できるため、小田さん以外にもう万人、別の患者さんも助けられます。このように、肝移植により助かる患者さんの肝臓が他の患者さんの肝移植に使われ、ドミノ式に移植が行われていくので、こうした肝臓移植を「ドミノ肝移植」と呼んでいます。
ただし、神経症状が出るのは何十年も先のこととはいえ、移植を受けたその日から、小田さんの新しい肝臓からは異型のアミロイドが産生され始めます。今のところ異型のアミロイドの蓄積を防ぐ手段はないので、自然経過を見ていくしかありません。しかし、そういうデメリットはあるにせよ、それまで瀕死の状態にいた小田さんが、これで普通の生活を営めるようになります。いわば、何十年分かの新しい命を授けてもらえるわけです。小田さんも、私たちも少し悩みましたが、正直なところ悩む必要はなかったのです。
移植はタイミング良く正常な臓器が提供されるのが一番ですが、必ずしもそういうわけにはいきません。そこで、臓器移植は待ったなしになります。移植センターの病院に移り、すぐに移植手術を受けました。幸い、小田さんは急性期の拒絶反応も乗り切り、順調な経過で、一カ月後には私たちの病院に帰ってきました。黄疸で全身が真っ黄色で、胸水があり呼吸も苦しそうで、腹水も著明で寝たきりで、食事もままならなかった小田さんが、歩いて帰ってきたのです。移植の効果の素晴らしさを十二分に理解している私たち医師でも、その姿を見て心から感激しました。いえ、一番感激していたのは、小田さんご自身だったのではないでしょうか。
退院後は免疫抑制剤の投与が欠かせないので、小田さんには現在も通院していただいて経過をみています。軽い知覚異常を訴える以外はまったく正常で、元気に通院されています。小田さんは、あのまま移植を受ける機会がなければ、生存の可能性はなかったでしょう。移植医療の効果を思い知らされたものです。
それにしても日本におけるドナー不足は相変わらずで、待機中に亡くなっていく患者さんがたくさんおられます。海外にまで出かけて移植を受けられる患者さんも絶えません。2010年の七月より、家族の承諾により臓器提供ができるように法律が改正されたので、臓器提供の機会が増えることを切に祈っています。

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