サプリ館の公式ブログ

個人輸入代行業者 サプリ館のブログ

肝臓病の体験談

      2015/11/22

肝臓病になってしまったら

2002年のお正月休暇の間の出来事です。故郷の那須温泉で家族水入らずのお正月を過ごしました。那須の冬は那須連峰を渡る風が強くすこぶる寒いのですが、雪が積もることは少ないのが普通です。その年も、寒いけれど、雪はありませんでした。楽しく過ごした最終日の前日、夕刻から雪が降り始めました。車で来ていたので「大丈夫かな?」と少し思いましたが、その夜はあまり気にもせず眠りにつきました。それが翌朝、目が覚めてびっくり。20センチほどの積雪で、一面の銀世界です。これでは坂道が心配なので、タイヤにチェーンを装着して帰ることにしました。

肝臓のサプリメント通販はこちら

ところが、寒い中の慣れない作業で腰に負担がかかったのでしょうか。チェーンをつけ終えて立ち上がった瞬間、腰に激痛が走り、動けなくなりました。いわゆる「ぎっくり腰」です。学生時代にスポーツをしすぎたせいか、私は腰が弱く、時々「ぎっくり腰」で動けなくなります。安静を保ち、湿布を貼り、鎮痛薬(ボルタレンという薬)をのんで改善、という既往歴がありました。普段は、そういう万一のことを考えて、鎮痛薬を常備携行しています。それが、このときに限って薬を持っていませんでした。不幸な出来事はこんなときに起こるものなのです。
幸い(じつは、これが災いだったのですが)、長女が同じような鎮痛剤(ロキソニンという薬)を持っていたので、それをのんで痛みがやわらぐのを待つことにしました。しぱらくして、痛みがやわらいできた時を見計らって、東京の自宅に帰りました。それから三日ほどは、そのロキソニンを続けてのんで、安静を保ちました。痛みがかなり軽減したところで、当時単身赴任していた秋田に戻りました。秋田に戻ってからも腰には十分に注意しながら、ゆっくりした動作を心がけ、なるべく安静を保ち、ロキソニンの服用を続けていました。
何事もなく数日が経過し、ほとんど痛みも消えた頃、何となく気だるい感じがしてきました。「風邪もひいてないし、何だろうな?」と思いながら、そのまま二日ほど過ごしました。その夜のことです。倦怠感が急激に強まり、全身に筋肉痛のような症状も出てきて、寝ても起きてもいられない状態になりました。さすがに「これは何だろうか?」と思いながら、朝を迎えました。全身倦怠感、全身筋肉痛は一向に治まりません。血液検査を受けることにしました。この時点では、私自身はまだ原因が思い当たらず、「変な風邪でもひいたのかな?」くらいにしか思っていませんでした。そのあと、医者にデータを見せられてびっくりです。
「AST=654、ALT=540」。おお、何たることでしょう。この数値は明らかに入院の対象で、急性肝炎まちがいなしです。この時点では、肝炎ウイルスの有無はまだ結果が出ていません。そこで、知らせてくれた医師は、ウイルス性の肝炎を疑ったのでしょう。A型肝炎ウイルスなら、生ものを食べたかどうかが問題になりますし、B型肝炎ウイルスなら性感染症も考えられます。そんな怪しい生活はまったく身に覚えがないし、B型肝炎のワクチンは打ってもらっていたので、私の中ではB型肝炎の可能性は否定していました。

そこで注目したのが、血液検査項目の中で、「γ‐GTP(ガンマ・ジー・ティー・ピー)」と「ALP(エイ・エル・ピー)」が上昇していたことでした。この二つは、「胆道系酵素(たんどうけいこうそ)」という一群の酵素です。黄疸が出たり、薬剤性肝炎や、お酒を飲み過ぎたときなどに、数値が上昇することが知られています。黄疸は出ていないし、お酒も正月休みに少し飲んだくらいだし……。
そこで患者であると同時に専門医である私は、「薬剤性肝炎」を疑い出したわけです。「そういえば、ぎっくり腰をやったとき、いつものみ慣れたボルタレンじゃなくて、ロキソニンをのんだな……」と思い当たったのです。
さて、原因の見当がついたのはよいとしても、この肝機能では入院せざるをえません。「劇症肝炎になったら困るな。でも、薬剤性肝炎なら薬をやめれば良くなることが多いし……」などと考えて、あれこれ悩むわけです。「そのまま入院してください」という声を聞きながら、「いや、着る物くらい自分の物を着たい」とかグズグズ言って、自宅に一度帰り、身の回りの物を用意しました。いつもなら数分でできることが、肝機能の数字を見たためか、鉛を背負ったような体の重さを感じて、かなり時間がかかった憶えがあります。腕を上げるのも億劫で、本当に動けませんでしたが、何とか入院にこぎつけました。
点滴をされ、ベッドでぐったり寝ていると、血液検査の結果がしだいに明らかになってきました。A型、B型、C型の肝炎ウイルスはどれも検出されず、とりあえずひと安心。「ほら、品行方正でしょう」と主治医の先生に自慢したものです。B型肝炎ウイルスが陽性の急性肝炎だと、感染源を特定するために性交渉の有無についていろいろ聞かれます。B型の急性肝炎は、現在では、性感染症の代表的なものだからです。検査結果を見ると、劇症肝炎のときに異常をきたす「凝固機能」も正常に保たれていました。それで「まず大丈夫だな」と思いつつ、ここはひたすら寝ることにしました。
翌日の肝機能検査では、黄疸も出ていないし、ASTが420、ALTが480と下降傾向を示していて、ひと安心。ここで専門医の目から詳細にみると、昨日はASTの方がALTよりも高かった(AST=654、ALT=540)のが、今日は全体に下降していて、しかも両者の値が逆転している(AST=420、ALT=480)ことが読み取れます。そこで私は、
「よし、これは肝炎のピークは越えたかもしれないな」と判断しました。「あとはこのまま、おとなしく寝ていれば治るだろう」と思ったものです。そして予想どおり、その後は全身の痛い重いような症状は急激に消えていき、五日後にはASTもALTも100以下になってきたので、退院することになりました。こうして、大騒ぎをした急性肝炎も完全に治癒し、二週間ほどでまた元気になりました。
その間に病院では原因の特定が行われ、薬剤性肝炎の犯人を突き止める「リンパ球刺激試験」という試験で、例のロキソニンか強陽性となり、原因がはっきりしました。皮肉なことに、「リンパ球刺激試験」は、私の出身教室である順天堂大学消化器内科で、人局当時、活発に研究されていた試験法です。そうして確立された方法で自分白身の急性肝炎の診断をしたのですから、人生とはわからないものだとつくづく思いました。
ちなみに、私がなった急性肝炎はロキソニンが原因でしたが、ロキソニン自体が悪いわけではなく、私自身の体がロキソニンに合わなかったということです。ロキソニンをはじめとする鎮痛薬は、世界でも処方される機会が一番多く、非常に優れた薬です。ただし、体質に合わないと、私のように急性肝炎を起こすこともあります。気がつかずに、自分の体質に合わない薬を続けて服用すると、急激な肝炎の悪化を起こし、場合によっては劇症肝炎になることがあるので注意が必要です。アレルギーのある薬は絶対にのまないことです。
このように、たとえ専門医でも肝炎になることがあります。それほど、肝臓の病気は身近でありふれたものなのです。

人間ドックの結果の見方

国民皆保険を基盤にした日本の医療制度は、大変良い医療制度だと思います。体調が悪いと思えば、自分の都合のよい時に、自分で医師を選んで受診することができます。実際には軽い病気は近所のかかりつけ医を受診すればよいのですが、極端な話ですが、風邪をひいて大学病院で受診しても、制度上は一向にかまわないのです。しかも、診察や薬にかかるお金も多くは保険から支払われます。
このような仕組みはごく当たり前と思われがちですが、決してそうではありません。患者が自由に病院や医師を選んで、好きに受診できる医療制度は、世界的にみて実は非常に少ないのです。医師不足、医師の偏在、医療費の増加などの問題が錯綜して、日本の医療制度は現在、少し混乱をしていますが、国民皆保険を基盤にした制度は今後も守るべきものと思います。さて、そうした医療制度の下、読者のみなさんも会社や地域などで、定期健診や人間ドックを受けていると思います。その結果を見て、「肝臓のデータがあやしい」と言われた時にどうしますか?

会社で営業を担当している四八歳の長原さんは、人間ドックの結果を見て悩んでいました。
その結果を表1‐2‐1に示します。

人間ドックの結果

人間ドックの結果

 

長原さんの結果を見ると、白血球数、血小板数は正常で、貧血もありませんでした。ただ、AST、ALT、γ‐GTPの数値が、どれも昨年より少し上昇していました。肝機能が少し悪そうに見えるのですが、どの程度悪いのか、治療が必要なのか、入院が必要なのか、肝臓病に関する検査項目の概略を説明していきましょう。

何をチェックすればよい?
検査結果の表には、なにやら難しげな漢字やカタカナ、アルファベットがたくさん並んでいますね。患者さんのなかには、「こういう文字を見ただけでイヤになる」と言う人がいます。それはそうですね、良く理解できます。各々の検査項目がどんな意味合いをもつのか、これらの検査結果が異常ならどの程度悪いのか等、わからないのはごく普通のことと思います。今時の病院では担当の医師は、患者さんに丁寧に説明することを求められていますので、かなりわかりやすく説明してくれると思います。もっとも、ひとつ一つの検査項目について詳細を説明することは多くの患者さんを抱えた医師には無理な話ですので、このあとを読んで基礎知識を身につけて下さい。
肝臓がいまどういう状態にあるかをチェックするには、まず「AST」「ALT」「γ‐GTP」「ALP」「総ビリルビン」という項目に注目します。また、検査の内容にもよりますが、肝炎に関わるものとして「HBs抗原」「HCV抗体」、肝がんの腫瘍マーカーである「AFP」という項目もあります。もちろん、血液検査全般として、赤血球数、白血球数、血小板数なども重要な項目です。

ASTとALT

AST(エイ・エス・ティー)とALT(エイ・エル・ティー)は、肝機能検査のなかでも一番基本的な検査項目です。この二つの項目は、人間ドックならずとも、一般の職場健診でも測定されます。以前は「GOT」「GPT」と呼ぱれていましたが、それぞれ名称が変わって現在は、AST、ALTと呼ばれています。どちらも「AOT」と一文字しか違わないので紛らわしいですが、若干の違いがありますのでそれぞれの違いに注意しましょう。
ASTとALTは、全身の臓器を形づくる細胞の中に存在する酵素です。どちらも、ふつうの状態では、細胞の中で仕事をしています。しかし、臓器に炎症などが起こった時には、細胞が破壊されることで血液中に漏れ出していきます。そうして漏れ出したASTとALTは、「逸脱酵素(いつだつこうそ)」と呼ばれています。血液検査では、その細胞から漏れ出してきたASTとALTが血液中にどれくらいあるかを測ります。
ALTは、そのほとんどが肝臓の細胞の中にあります。したがって、この項目の数値が大きく上がっていたら、肝障害があると考えられます。ALTの正常値は、40以下です。一方、ASTも肝臓の細胞に多く含まれますが、筋肉や心臓、腸などの細胞にも含まれています。そのため、肝臓以外の臓器の細胞、とくに筋肉系の細胞などが破壊されているときにも、血液中に流れ出すことがあります。そこで、診断には注意が必要になります。ASTの値はALTの値とセットで見て判断することが重要です。たとえば、心筋梗塞や筋炎などの時は、ALTは正常で、ASTが高値を示すことがあります。
ASTの正常値として「40以下」を採用している医療機関が多いようですが、これは甘すぎです。本当に正常の人は「30以下」なのではないかと私は思います。このあたりは今後、医療者側での検討が必要でしょう。

肝機能検査の目的と項目

肝機能検査の目的と項目

 

ALPとγ‐GTP

ALPとγ-GTPは、「胆道系酵素」と呼ばれる酵素です。この二つの値が上昇していると、何らかの原因で胆汁の流れがうまくいかなくなっている可能性があります。
胆汁の流れが悪くなるのは、二つの場合が考えられます。ひとつは、がんや胆石などが原因で、機械的に流れが悪くなる「閉塞性黄疸」の場合。もうひとつは、胆道系に閉塞がないのに胆汁の流れが悪くなる「肝内胆汁うっ滞」の場合です。両者とも多くは黄疸を伴い、総ビリルビンの値が上昇するのが特徴です(後述)。
ALPの値が単独で上昇し、総ビリルビンの上昇がない時は、肝臓以外の病気の鑑別も必要になります。骨や小腸の病気などでもALPは上昇することがありますし、子どもでは正常でも高い値を示します。ALPの正常値は、110?348の範囲です。
一方、γ-GTPは、胆道系酵素であると同時に、アルコールの過剰摂取により上昇することが知られています。お酒を毎日たくさん飲む人は、かなりの割合でγ-GTPの上昇がみられます。γ‐GTPは、アルコール性肝障害の敏感なマーカーです。お酒好きの人は、この値によく注意してください。
また、特殊な病態ですが、原発性胆汁性肝硬変や原発性硬化性胆管炎などの初期症状が、ALPや7‐GTPの上昇で発見されることがあります。γ‐GTPの正常値は、男性で70以下、女性で30以下としている医療機関が多いようです。

総ビリルビン

ビリルビンは本来、肝細胞で作られる物質で、胆管を流れて、十二指腸から小腸、そして大腸に流れ、最終的に便となり体外に出されます。その間に化学反応を起こします。便の色が黄色いのはそのためです。「黄疸」の本体は、そのピリルビンです。血液中のビリルピンの値が上昇すると黄疸と言われます。先ほど述べたように、ビリルビンの排泄がどこかで閉塞されてうまく胆汁が流れない、肝細胞でうまく胆汁が作れない、赤血球から何らかの原因でビリルビンの原料がたくさん溶け出したりした場合に、本来腸に流れ出るべきビリルビンが血液中に溜まってくるのです。これが黄疸です。
黄疸は自分の目で見てもわかります。たとえば、黄疸は白目の部分にも現れます。ビリルビンの値が二・〇以上あれば、明るい部屋ならば、白目の部分に黄疸があることに気がつきます。

また、ビリルビンは尿中にも回ります。尿の浸染が見られ、ひどい時は紅茶を煮詰めたような色になります。
ビリルピンは基本的には、ALPやγ‐GTPといった胆道系酵素と同じような動きをしますし、肝細胞自体の障害が高度の時にも上昇します。また、何らかの原因で、赤血球が過剰に壊される溶血性貧血でも総ビリルビンは上昇します。この場合は、ビリルビンの中でも、間接ビリルビンと言われる部分が上昇します。総ピリルピンの正常植は0.4?1.2です。

総タンパク、アルブミン

血液中のタンパクは、ほとんどが肝細胞で作られ血液中に放出されます。多くはアルブミンと呼ばれるタンパクですが、一部に免疫を司る「γグロブリン(ガンマ・グロブリン)」と呼ばれるタンパクも流れています。総タンパクの低下(アルブミンの低下)は、多くは肝機能の低下を直接反映しています。肝細胞でタンパクの合成が十分にできなくなっているためで、肝硬変などの進んだ病態を表します。急性肝炎の場合は、劇症肝炎などになる危険があります。肝臓病以外では、ネフローゼやタンパク漏出性胃腸症など、血液中のタンパクが体外に出てしまうような病気が考えられます。総タンパクが高い場合は、自己免疫性疾患や骨髄腫などでγグロブリンが増加している病態も考えられます。総タンパクの正常植は、6・5?8・2です。

赤血球数、白血球数、血小板数

赤血球数は、貧血の程度を示す植です。正常植は430万?560万くらいです。この数値が、430万以下に低くなると「貧血」と言います。程度にもよりますが、慢性に長時間続いている貧血はあまり症状がありません。一方、急激に起こる貧血は、程度が低くても息切れ、立ちくらみ、意識消失などの症状が強く出ます。若い女性の貧血は、生理などで定期的に血液が体外に出ていくため、赤血球を作る際の原料になる鉄が不足してなる鉄欠乏性貧血がほとんどです。この貧血は鉄剤をのんでもらうと比較的簡単に治ります。また胃潰瘍や胃がん、大腸がんなどからじわじわ出血している場合も考えられますので、こういう場合は精密検査が必要です。肝臓の病気で貧血が出るのは、肝硬変が進んで肺臓が大きくなり、赤血球が肺臓に溜まったり、こわされる時です。この場合は注意が必要です。
白血球数は、様々な病態で動きます。正常植は3900?9700です。増加する時は、体のどこかに炎症がある時で、肺炎や虫垂炎などがその一例です。数値が3万?4万にも増えているときは、白血病などの血液自体の病気が考えられます。

一般の肝炎で白血球数が増加することはあまりありません。アルコール性の重症の肝炎では白血球数の増加が特徴ですが、これは例外です。肝臓の病気で問題になるのはむしろ数値が低下している時で、赤血球数と同様に、肝硬変の進んだ段階で低下します。これも肺臓の機能の尤進が原因です。したがって、肝臓病で白血球数の低下が見られたら要注意です。
血小板数はおおよそ15万?34万が正常値です。肝臓病で問題になるのは、血小板数の低下です。これも、赤血球数や白血球数の低下と同じく、肺臓の機能充進のためです。後述しますが、血小板数の低下は慢性肝炎から肝硬変への進行を意味します。

ウイルス検査

HBs抗原とは文字どおり、B型肝炎ウイルスの有無を調べる検査です。検査の結果、陽性と出た場合は、B型肝炎ウイルスが現在体の中にあることを意味しています。HCV抗体とは、C型肝炎ウイルスの有無を調べる検査です。この結果が陽性の場合は、多くはC型肝炎ウイルスに感染していることを意味します。ただし、一部には、過去にC型肝炎ウイルスに感染したけれども、現在は体の中にウイルスがいない人もいます。これ以上の検査は人間ドックでは無理で、専門医を受診すべきですが、本当にウイルスがいるかどうかは、遺伝子検査が必要です。

腫瘍マーカー

肝がんには「腫瘍マーカー」と呼ばれる目印があります。ひとつはAFP(エイ・エフ・ピー)と呼ばれるもので、もうひとつはPlvKA‐n(ピブカ・ツー)です。AFPの正常植は20以下、PIVKA‐Hの正常値は40以下です。
人間ドックでは、ほとんどAFPが測定されます。くわしくは後述しますが、AFPの数値が20以上を示す場合は、肝がんである可能性があります。ただし、すべてが肝がんであるということではなく、慢性肝炎や肝硬変でも高くなりますのでこの植だけで判断するのは間違いです。肝がん以外でAFPが上がっているのは、炎症によって肝細胞が障害を受けた後、新しい肝細胞の再生が起こっている証拠でもあるのです。

診断を伝える
医師は以上のことを頭の中に入れながら、検査の結果をみて診断しtす。さて、さきほどの長原さんの検査結果はどうでしょうか。
人間ドックの肝機能検査結果を見ると、長原さんのAST、ALT、γ‐GTPは確かに高いといえます。しかし、驚くほど高い値ではありません。軽度の上昇です。これだけみると、原因は、ウイルス、アルコール、薬剤性肝炎など、何でも考えられます。ただ、HBs抗原とHCV抗体が陰性ですから、この時点で、原因としてウイルス性肝炎は考えにくいことになります。したがって、アルコール性か、薬剤性肝炎かということになります。一方、貧血も白血球数減少も、血小板数減少もありません。そこで、肝臓の病気の程度としては、それほど進行はしていないと考えられます。
血液検査でわかるのはここまでです。この先は患者さんへの問診が重要になります。長原さんは、仕事で営業をしていて、とても多忙のようです。取引先との接待で一週間のうち3、4回は会食があり、お酒も付き合いと言いながら結構飲んでいるようです。平均して毎日3合くらいは飲んでいたそうです。とくに病気もしたことがないので、薬やサプリメントはのんでいないとのことでした。そこで私は、薬剤性肝炎の可能性は低いと見ました。
この時点で、アルコール性肝障害の可能性を考え、超音波検査と、放射線CT検査を受けていただきました。超音波検査とCT検査では、脂肪肝が発見されましたが、肝がんを思わせる異常所見はありませんでした。その結果、長原さんには「アルコール性の脂肪肝」という診断を伝えました。

話を聞いてみると、体重もこの二、三年は増加の一途をたどっていたそうで、三年前に比べて五キログラム増えたそうです。アルコール性肝障害の処方隻は、禁酒が一番です。それができなければ節酒が必要です。アルコールを飲みながら肝臓が良くなる薬はありませんので、しばらくは頑張って努力して、ニカ月後に再診していただくことにしました。この「ニカ月後」というのが実はミソなのです。一ヵ月では短すぎて禁酒などの効果が十分でないし、あまり頻繁だと面倒になります。半年後というと、まったく危機感が失われ、来院しなくなることが多いのです。患者さんの心理というものは結構難しく、医師は病気を診ながら、患者さんの心も見ています。
そしてニカ月後ー。再来院した長原さんは、体重がニキログラム減少して、血液検査でもほぼ正常な値になっていました。営業の接待の時には、アルコールは最初の乾杯だけで、あと
はウーロン茶に替えて、摂取カロリーも考えながら節食に努めたそうです。まわりの人たちに「肝臓が悪く医者に禁酒を言い渡された」とカミングアウトして理解を求めたそうです。これはとても良い方法で、自分だけで禁酒するよりも成功する確率は高いと思います。ここで安心することなく、節酒、節食を継続することが健康の秘訣です。このように、アルコール性肝障害は、アルコールを止めることにより速やかに良くなるのが特徴です。ただし、アルコール性肝硬変まで病態が進んでいると、アルコールを止めても急速には良くならないこともあります。
あまり進行する前にアルコールを止めることが肝要です。長原さんは悩むことはなかったのです。患者さんの病気で悩むのは医者の仕事です。せっかく人間ドックで異常を見つけたのですから、一度は専門医を受診してみることです。

黄信号を見逃さない

肝臓の病気は、早い時期は症状が少ないのが特徴です。とくに、長い経過をたどる慢性肝炎や肝硬変は、初期にはほとんど症状がありません。もちろん、まったく健康であった人が急性肝炎にかかった時は激しい症状が出て、病院に行くことになる場合もありますが、一方で「不顕性感染」といって、まったく症状もなく自分でも知らないうちに治っている場合も多いのです。
人間ドックや健康診断の目的は、おもに慢性的に経過する病気を発見することです。肝臓病でいえば、脂肪肝や慢性肝炎や肝硬変を見つけることです(例外的に急性肝炎を見つけることもあります)。人間は痛みに対して非常に敏感なので、胃潰瘍ができたり、胆石発作を起こしたりして、「痛い」と思ったらすぐに病院にかかります。ところが、人間ドックで「肝機能が悪い」と指摘された人は、「わざわざ病院に行くまでもないだろう」と思って、そのまま放置してしまいがちです。黄疸が出たり、浮腫が出たり、腹水が出たりといった、はっきりした自覚症状がないため、ピンとこないのでしょう。しかし、肝臓病の場合、とくに問題になるのは、そういう「病気にかかっているのに症状がない人」をどうするか、なのです。
現在、私の外来に通っている大林さんは四八歳の自営業の方です。数年前の人間ドックで肝機能異常を指摘されました。大林さんもやはり、初めのうちはピンとこなかったそうです。それが、あるときから急に気になりはじめ、「念のため病院で診てもらおう」と思って私の外来を訪れたのだそうです。病気が発見されるときは往々にして、「あるとき急に気になって」とか、「念のため」とか、そういう些細な気持ちの変化がきっかけになります。
表1‐3‐1は大林さんの検査結果です。

検査結果

検査結果

 

一見すると、前節で紹介した長原さんと同じように、脂肪肝のように見えます。データで見るかぎりは、より軽症の脂肪肝であるように見受けられます。ただし、決定的な違いがあります。大林さんはお酒をまったく飲めないのです。しかも、HCV抗体が陽性と出ています。これは、C型慢性肝炎の疑いがあるということを意味しています。こういう「黄信号」を見逃してはいけないのです。

すぐに、HCVIRNAの遺伝子検査を行い、ウイルスの量と同時に遺伝子型も測定しました。結果を見てみると、HCV‐RNAは陽性で高ウイルス量、遺伝子型は2a型でした。ついで超音波検査と放射線CT検査を行い、肝がんの合併がないことを確認しました。
あとでくわしく説明しますが、大林さんはC型のウイルス性肝炎にかかっていました。ただし、ウイルスの量は多いのですが、大林さんの場合は治りやすいタイプの遺伝子型でした。そこで私はインターフェロンによる治療の可能性を考えて、どのくらい肝炎が進んでいるかを知るために、局所麻酔をして肝臓に針を刺して組織を採取する肝生検検査をしてみました。
顕微鏡を使って病理学の先生と詳細に診断したところ、炎症は少しあるようですが、線維化はほとんど進んでいないFI程度(四段階の一番軽症。後述)であることがわかりました。大林さんの遺伝子型のC型肝炎は、80%程度の人が治療で完全治癒します。となれば、善は急げです。早速、ペグインターフェロンの注射とリバビリンというのみ薬の併用療法を行いました。経過はとても良好で、半年間の治療でHCV‐RNAも完全に消失して、肝機能もAFPも正常になりました。その後も三ヵ月ごとに検査を繰り返して調べていきました。ウイルスの再燃(ウイルスがもう一度出てくること)はなく、肝機能も正常のまま推移し、その結果、大林さんのC型肝炎は完全に治りました。
これは、人間ドックがきっかけでC型肝炎が見つかり、治療がうまくいった例です。しかし、もしあのまま放置していたら、大林さんはどうなっていたでしょう? もしかすると、10年後には肝硬変や肝がんにまで病気が進んでいたかも知れません。この例でもわかるように、たとえ偶然の機会でも、肝炎ウイルスが見つかった場合は要注意です。何でもない場合もありますが、一度は、精密検査を受けることを強くおすすめします。
要注意なのはウイルスだけではありません。肝機能異常でAST、ALT、γ‐GTPなどの異常を指摘された場合は、たとえ肝炎ウイルスが陰性でも、一度は精密検査を受けた方がよいと思います。血液検査で異常を指摘された時点で、すでに黄信号なのです。そのまま様子をみていればよいか、治療が必要かの見極めは、私たち専門医の仕事であり、また腕の見せどころです。医師を信頼して、一緒に治療に取り組んでほしいと思います。
とはいえ、「異常が見つかりました」と指摘されれば不安になるのが人間です。自分はいまどういう病気なのか、知りたい気持ちは強くあっても、こわくて病院に行けないということもあるでしょう。病気というのは理不尽なもので、病気になった人は「どうして私なの?」と割り切れない気持ちでいっぱいになります。でも、勇気をもって精密検査を受けましょう。そのまま気にしなくてよいこともあれば、生活習慣を少し変えれぱすむこともあります。そうすれば問題は解消し、あれこれ気に病んだり、心配をしなくてよくなります。また、治療が必要な状態であることが確認できた場合は、早期に治療を受け、問題を解決することができます。すべての病気に共通することですが、病気は早期に発見されればされるほど治る確率が高いのです。
もし早期に発見する機会を逃し、病気がもう少し進んでいる場合は、もはや悩む必要はありません。黄疸が出たり、浮腫が出たり、腹水が出たり、はっきりと症状が出ていれば、黄信号でなく、それは「赤信号」です。何をおいても、まず第一に治療です。すぐに病院にかかるべきです。現在の日本の医療は本当に高いレベルで治療を受けられるようになっています。早期にこしたことはありませんが、どんな進行状況でも治る可能性があるのです。

病院に行く際の注意点

医師に何を聞けばよい?
人間ドックの検査結果を突き付けられて、さんざん悩みましたが、意をけっして病院を受診することにしました。さあ、どんなことに注意をしたらいいのでしょうか? 担当する医師には、何を聞いたらよいのでしょうか?
病院を受診する際の注意点は三つです。
その1 原因は何か?
その2 病状はどの程度か?
その3 治療はどうするか?
この三つを医師にきちんと間くことができたら、それで十分です。あれこれ気がかりで思い悩むかもしれませんが、あまり心配せずに、前を向いて、これからの治療に向かい合いましょう。
その先のことは担当医が適切に指示してくれます。
では、この三つを肝臓の病気に当てはめて考えてみましょう。まず一つ目の「原因」ですが、医師に聞くとよいのは、「原因はウイルスなのですか?」ということです。もしウイルスが原因ならば、「B型なのですか? それともC型なのですか?」
と尋ねてみましょう。ウイルスがB型かC型かによって、今後の治療法に大きな違いが出てきます。ウイルスの種類により治療法は根本的に違うからです。
もし原因がウイルスではない場合には、「では原因は、アルコーールですか?」「免疫異常ですか?」「薬剤ですか?」「肥満か、メタボですか?」と尋ねてみるとよいでしょう。ウイルス以外でも肝臓病の原因は様々あるからです。
肝臓の病気は現在、多くの場合、原因を特定できるようになってきています。もちろん、いまだに原因不明の肝臓病もあることはありますが、大体は、患者さんへの問診、血液検査、超音波やCT検査などを組み合わせれば、解決できます。肝臓の病気をしっかり治すためには、まず原因をきちんと知ることが第一歩になるのです。
さて次に、二つ目に問くとよいのは、「病状はどの程度ですか?」です。肝臓の病気は大きく分けて、急性肝炎と慢性肝炎の二つがあります。多くの肝炎、とくにC型肝炎に代表されるウイルス性の肝炎は、急性肝炎から慢性肝炎を経て肝硬変に進むことが多いとわかっています。さらに進行すると、肝がんを合併したりします。また、肝硬変は、ウイルス性の慢性肝炎からだけでなく、脂肪肝から進行してなることがあるのもわかってきました。このように徐々に進んでいくのが肝臓の病気ですから、いま自分の病状がどの程度かをきちんと知っておくことは大切です。
ただし、病状を正確に把握するのは、外来だけでは無理な時もあります。正確な病状の診断には、入院をして肝生検という検査を受けることが必要です。肝生検では、肝臓に細い針を刺し、組織を取り出して顕微鏡で調べます。
そうして原因と病状の程度がわかれば、おのずから治療法が決まってきます。そこで、医師に尋ねる三つ目として「では、治療法はどうするのですか?」と聞いてみてください。そして、「治療の必要な病気なのですか? それとも、治療をしなくてもよい病気なのですか?」と必ず聞いてください。肝臓の病気は、自然に治ってしまうため放置して良いもの、特別の治療を
しないと絶対に治らないものなど千差万別です。治療のバリエーションが多いのもこの病気の特徴です。
肝臓病に限らず、病気の治療では、医師と上手にコミュニケーションをとることが、なにより大切です。医師の方も「原因は何か?」「病状はどの程度か?」「治療法は?」の三つを、患者さんに十分理解してほしいと思っています。遠慮せずに、積極的に聞いてみてください。医師はひとりひとりの患者さんの肝臓病の原因、病状に応じて対策を考え、次に必要な検査を進め、必要な薬を出し、治療に専念します。

どんな病院に行けばよい?
人間ドックの結果を手にして、「肝臓が悪そうだ」と指摘されました。病院へ行くのは少し抵抗があるけれど、将来のことを考えると、きちんと検査を受けておきたい。でも、いったいどんな病院に行ったらいいのだろう? かかりつけの近所の開業医の先生がよいのか? 町の大きな一般病院がよいのか? それとも、大学病院がよいのか? 悩んでしまいますね。
肝臓の病気は、自覚症状も乏しいために軽視されることがままあります。きちんと診てくれる医師であれば、開業医の先生でも、一般病院でも、大学病院でもかまいません。ただ、この「きちんと」というのが判断に困るところでしょう。
一応の目安は、「肝臓病の専門医かどうか」「消化器病の専門医かどうか」の二つです。日本肝臓学会では、毎年、専門医認定試験を行って、十分に肝臓病に精通した医師に「専門医資格」を与えています。さらに、専門医資格の更新には一定の講習会や学会出席が義務づけられています。したがって、専門医資格を持っている医師は、肝臓病の診断治療においては十分なレベルを持っているものと考えてよいと思います。消化器病専門医も同様です。また、最近充実してきた肝炎に対する公費による医療費補助の申請書類を出すには、肝臓病専門医や消化器病専門医の署名が必要となることもあります。まず一度は肝臓病専門医や消化器病専門医の先
生に診てもらうのが安心でしょう。
ただ、「肝臓病専門医」といっても様々です。開業している医師もいれば、総合病院に勤務している医師もいます。また、大学病院にいる医師もいます。肝臓病の場合には、血液検査だけでは解決できない問題もあるので、超音波検査や放射線CT検査、MRI検査などが必要になる可能性もあります。大学病院であれば、それらの設備はすべて揃っているでしょうし、専門医もたくさんいるはずです。そう考えると、大学病院に行くのが一番良さそうに思えます。
しかし、それだけに大学病院を受診する患者さんの数は多く、予約を取るのがずいぶん先になったり、時間がかかったりなどのデメリットもあります。一方、開業医や一般病院では、大学
病院ほど設備は充実していないかもしれませんが、患者さんが受診するのは便利そうです。
私が考える「一番良いお医者さん」は、「自分の分をわきまえているお医者さん」です。いくら肝臓病専門医と言っても、超音波もCTもMRI検査装置もすべて揃えて持っている開業医の先生は少ないと思います。そこで、自分ができる範囲で判断をして、自分の守備範囲を超える検査に関しては、連携する大学病院なり総合病院なりに検査を依頼する。そういう医師が「一番良いお医者さん」なのではないかと、私は思います。
病院と開業医の連携は、肝臓病のみならず、すべての病気の患者さんの管理に必須のことになってきています。大きな総合病院や大学病院だけですべての患者さんを診ることは不可能ですし、開業医の先生だけですべての患者さんを診ることも当然不可能です。肝臓病専門医でな
い開業医の先生でも、この連携をうまく活用し機能させているなら、十分に対応が可能と思います。医師同士なら、どこに肝臓病専門医がいるかもわかっています。要は、医師同士の「連携のネットワーク」の中に自分から入っていくことなのです。そして、一度は専門医の目で診断をしてもらい、治療方針を決めてもらうことです。その後のフォローアップは、近くのかかりつけの開業医の先生にお願いするのも、選択肢の1つとして十分にあると思います。

肝臓のサプリメント通販はこちら

 - 肝臓病