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アメリカのアナボリックステロイド事情

      2016/05/31

アメリカのアナボリックステロイド事情

1984年、ハルク・ホーガンはイラン人レスラーのアイアン・シークを倒すと、星条旗を振りかざしながら叫んだ。

「アイマ・リアル・アメリカン!」

俺こそが、本当のアメリカ人だ!この筋肉こそ、本物のアメリカ男の証しだ!ニューヨーク州ポーキプシーに住むベル家の3人兄弟は、その試合をテレビで観て天啓を受けた。

筋肉だ!筋肉だけが僕たちを本当のアメリカ人にしてくれるんだ!

ベル3兄弟はみんなイジメられっ子だった。長男マイクは肥満、次男クリスは背が低く、三男マークは学習障害だった。「デブ」「チビ」「バカ」と、学校であざ笑われ、殴られ、蹴られ、仲間はずれにされた。そんな居場所のない3人にホーガンが道を示してくれた。筋肉だ。3人は身体を鍛え始めた。

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80年代は筋肉の時代だった。大リーグでは、レスラー並みの身体をしたホセ・カンセコとマーク・マグワイアがバットを大振りしてバカバカとホームランを打っていた。スクリーンではアーノルド・シュワルツェネッガーが、シルベスター・スタローンが筋肉をうならせてアメリカの敵を倒していた。 筋肉こそアメリカだった。 ベル3兄弟は毎日バーベルを持ち上げ、プロテインを飲み、筋肉をつけていった。彼らをイジメる者はいなくなった。身体が大きくなるとそれだけで他の人よりも偉くなったような気がした。

高校を出ると長男マイクはプロレスラーを目指し、夢にまで見たWWEのリングに立った。三男マークは重量挙げ選手になった。一番背の低い次男クリスだけは大学を卒業してWWEのライターになった(WWEの展開にはシナリオがある)。 だが、3人には親にも言えない秘密があった。筋肉を強化するために合成ステロイド剤を常用していたのだ。いや、彼らだけじゃない。

ホーガンも、シュワルツェネッガーもステロイドをやって ことを認めた。州知事になったシュワは「努力すれば勝利する。それがアメリカ だ」と演説したが、彼がボディビルのチャンピオンになれた理由は努力だけじゃなかったの だ。

「それってテストでカンニングするようなものじゃないか幻滅した次男クリスはステロイドをやめた。そして考えた。

「どうして僕らは、薬物を使ってまでたくましくなろうとするのか?」その答えを見つけるため、クリスは2008年にドキュメンタリー映画を撮った。その名も『ビッガー、ストロンガー、ファスター(もっとデカく、強く、速く!)』。幻滅はアメリカ全土を覆っている。ホームラン記録を打ち立てたバリー・ボンズも

「ステロイドだと知らずに使用したこと」を認めた。ステロイド使用を認めたマリオン・ジョーンズはシドニー五輪の陸上で獲得した5つのメダルを剥奪された。カンセコは自分もマグワイアもステロイドをやっていたと告白した。しかし、プロアスリートはステロイド使用者のわずかB%、氷山の一角にすぎない。残りの艇3%はベル兄弟のようなアマチュアや学生だという。ステロイドは議会でも問題になった。

ブッシュ政権は学校でステロイドの危険性を教育するプログラムに巨費を投じた。ステロイドの危険性として一番に挙げられるのは「ロイドレイジ」だ。ステロイドには怒りや憂うつ、自殺衝動を誘発する副作用があるといわれ、WWEのレスラー、クリス・ベノワもそれが原因で妻子を殺して自殺したといわれる。

しかし、『ビッガー、ストロンガー、ファスター』で監督のクリス・ベルが医学関係 者に取材調査した結果、ロイドレイジが起こるのはステロイド使用者の5%にすぎないと判明する。「たとえステロイドが本当に危険だとしても、『医学的に危険だからステロイドを使うな』という論理は弱いんだ」クリスは言う。「それならば安全な筋肉増強剤が開発されたら使っていいことになってしまうからだ。

問題は、薬を使ってまでデカく、強くなろうとすること、そのモラルなんだ」現副大統領のジョー・バイデンは議会で「薬を使って強くなるのは反則だ。アメリカ的ではない」とスピーチしたが、クリスは「いや、その逆で、ものすごくアメリカ的だと思うよ」と反論する。クリスは、アメリカの人体増強の歴史を掘り下げていく。合成ステロイドは米ソ冷戦時代に誕生した。ソ連のオリンピックの重量挙げチームがステロイドを使っていると聞いたアメリカチームが化学者に開発させた。アメリカは負けず嫌いだ。そのころからオリンピック選手はステロイド漬けだったという証言が出てくる。まだ発覚していなかったし、合法だった。だから67年当時シュワルツェネッガーも「ステロイドは筋肉作りに役立つ」と無邪気に認めていたのだ。

アナボリックステロイドが生まれてからスポーツ選手の身体は急激に変化していった。そもそもアメリカンコミックのヒーローたちはみんな筋肉モリモリだった。星条旗の前でたくまし い胸を張るスーパーマンがアメリカの男の理想として子どもたちに刷り込まれた。そんな男はマンガの世界にしかいないのに。

ところがアナボリックステロイドがそのありえない身体を現実にしてしまった。デカく、強く、それはアメリカの思想だ。スーパーサイズのハンバーガーとコーラをむさぼり、戦車のようにガソリンを食らうSUVやトラックを好み、ガソリンを求めて戦車や爆撃機で他国に攻め込む。「男だけの問題じゃない。

人体改造は女性のほうがすごい」とクリスは言う。シリコンで乳房を膨らまし、フェイスリフトとボトックスでシワを取り、リポサクションで脂肪を吸引する。実は、ステロイド剤は筋肉増強以上に女性の若返り用に消費されているのだ。絶対に発見されないドーピングも増えていく。

アメリカには、息子をバスケットボーために、成長期の子どもに成長ホルモンを投与する親が実際にいる。

もちろん絶対検査には引っかからない。「もうすぐ遺伝子ドーピングの時代が来る」そう言って、クリスは遺伝子操作で作られた筋肉牛を見せる。全身すさまじいばかりの筋肉の塊だ。遺伝子操作で超人が生まれたとき、スポーツ界はどう対応するのだろうか? 身体は科学の力でいくらでも増強できる。では、心は?

もちろんだ。アメリカ人は「不可能」という言葉が嫌いだ。プロレスラーの多くがリングでテンションを上げるために覚醒剤やコカインなどアッパー系の薬物を常用し、それで死亡する事件が相次いだ。しかし、薬物で精神をコントロールすることはアメリカ人の日常になっている。クリスはアメリカのクラシック演奏家の半数がステージでベータプロッカーという「アガらない薬」を使用していると知る。また、学生たちは試験前に勉強するとき、「スタディドラッグ」を服用する。アデラルという商品名だが、成分はアンフェタミン。つまり覚醒剤だ。

アメリカ空軍はその発足時から、出動するパイロットたちにアンフェタミンを服用させている。日本は第二次世界大戦時にヒロポンを兵士に与えたが、アメリカではそれが今も続いているわイラク戦争に従軍した兵士たちは本当にプロザック(抗うつ剤)を支給され、瞬状態で戦闘していた。

アメリカ人は朝、目覚めると興奮剤を飲んで気合を入れて出勤し、悲しみは抗うつ剤、怒りは精神安定剤で鎮め、バイアグラでボッキさせてセックスし、睡眠薬を飲んで眠る。今の精神状態が自然なのか、薬物で作られたものなのかわからなくなっていく。心も身体も人工的なバーチャルリアリティに生きている。

シルベスター・スタローンは還暦にもかかわらず『ロッキー』『ランボー』の二大ヒーローを演じ、その筋肉美で世間を驚かせたが、07年、オーストラリアに違法とされるステロイド剤を持ち込んで逮捕された。当初、彼は「持ち込んだのは成長ホルモンだけだ」と主張していたが、最終的にアナボリックステロイド剤も所有していた事実を認めた。その後もスタローンは「あれはテストステロンだ。ステロイドじゃない」などと言い訳しているが、テストステロンとはステロイドの一種である。

身体以外に何ももたない貧しい者が億万長者になれるスポーツの世界ほど、アメリカンドリームを代表するものはありません。「シュワルツェネッガーは一文なしのオーストリア移民だったが、筋肉で成功し、州知事にまでなった。アメリカンドリームだよ」『ビッガー、ストロンガー、ファスター』で、ひとりのボディビルダーがそう語ります。彼は、映画『オーバー・ザ・トップ』(87年)でシルベスター・スタローンと腕相撲を演じた男ですが、50歳過ぎた今も身体を鍛え続けています。でも定職はなく、家もなく、 『自動車に寝泊まりしています。ジムでたまにボディビルのコーチをした収入は全部ステロイド剤に消えていきます。彼には筋肉以外に何もありません。 ちなみに、『ビッガー、ストロンガー、ファスター』の副題は「アメリカ的になることの副作用」といいます。

「ボンズだってやってるんだ!」ステロイドが殺した学生アスリート

2002年10月1日早朝、24歳の元カレッジベースボールの外野手ロブ・ガリバルデイは、射撃場から盗んだ357マグナム拳銃で自分の頭を撃ち抜いた。「大リーグ入りの夢破れて自殺」と報じられたが、この事件が2年後、再び掘り起こされている。

理由はステロイド問題だ。サンフランシスコ・ジャイアンツのホームラン王バリー・ボンズが「筋肉増強剤アナボリックステロイドだと知らずに使用したこと」を認め、プロスポーツ界に夢延する薬物の規制は国政レベルで討議される大問題に発展した。国家衛生局長リチャード・カーモナも「危惧すべきはプロスポーツの倫理だけではない」と言う。「青少年に与える影響だ」と。

自殺したロブは死の直前、父にステロイド使用をとがめられたとき、「ボンズだってやってるんだ」と反論したという。04年12月19日付の「サンフランシスコ・クロニクル」紙によれば、ロブが薬と出会ったのは高校の野球部にいたころだった。トレーナーが「君はあと10キロほど筋肉を増やす必要がある」と言って筋肉増強剤を手渡したのだ。

彼はスポーツドラッグのセールス マンを兼ねていた。大学に進学して野球部に入ったロブはもっと強力なステロイドが欲しくなった。それには医者の処方等がいる。そこで友達と車でメキシコ国境を越え、闇医者に金をつかませてステロイドを手に入れた。彼は友達の目の前で自分の尻に注射してみせた。

筋肉は目標のmキロ以上増強され、大学1年目のシーズンでMホームランを叩き出し、名門USC(南カリフォルニア大学)の奨学生に選ばれた。このUSCでもロブは「さらにmキロ増やせ」と言われ、ステロイドを打ち続けた。薬潰けになった彼は他のドラッグにも手を出した。大学の勉強についていくため、学習障害者用の向精神薬も服用し始めた。

崩壊が始まった。落第し、落ち込んでいたかと思うと突然激怒してバットを振り回して暴れるようになった。さらに恒常的な眠気に悩まされ、授業中どころか野球の練習中にも眠りこけて、ついには野球部を退部させられ、奨学金も取り消された。

怒りや睡魔はステロイドの副作用だとハーバード大学のハリソン・ポープ博士は言う。博士によるとステロイド常用者の精神は不安定になり、激怒と絶望の間を激しく揺れ動き、最悪の場合、自殺する。

02年6月、大リーグのドラフトが行なわれた。ロブにとってこれが最後のチャンスだったが、結局、指名されなかった。彼はこんなことを口走った。 「キャメロン・ディアスが僕のプレイを見にくるんだよ」そして「僕はキリストだ」と言ったり、テレビに向かってひとりで話し続けたりの奇行の果てに自殺した。

セントラル・ミシガン大学のトレイシー・オルリッチ博士の調査によれば、10代のステロイド使用者の数は03年に30万人に達したという。カリフォルニアなどの州は未成年のステロイド購買を禁止しているが、オンラインで簡単に買える。

先のポープ博士は著書『アドニス・コンプレックス』で、アメリカ人のステロイド使用の原因は、「子どものころからG工ジョーのような肉体を理想として刷り込まれることだ」と論じているが、それ以上に問題なのはスポーツマンをアメリカンドリームの象徴として崇拝しすぎる風潮だろう。名門大の奨学生やプロ入りして億万長者になるのを夢見るのは子どもだけではない。

アメリカではスポーツ選手となるには身長が足りない成長期の子どもに対してHGH(成長ホルモン)を与える親が増えているという。HGHは合法だが末端肥大など副作用がある。「USニューズ」誌04年7月7日号によれば、小学校4年生のバスケット人口47万人に対して、大学の選手数は3部まで入れても4千人にすぎない。

そこからNBAに入れる数は毎年30人だ。野球やフットボールも推して知るべし。そんな可能性の低い博打のた めに子どもの身体を賭けるか。04年春にもテキサスのプラノ・ウエスト高校のバスケ部員クリス・ウォッシュが高速道路に陸橋から飛び降り自殺しようとした。原因は友人の野球部員が首吊りしたからだ。クリスもその友人もステロイド常用者だった。「バスケは僕のすべてだった」と語る彼は今、更生施設で目標を失って呆然としている。

「スポーツバ力は腕立て千回」底辺高校生を救ったコーチ・力ーター

2004?05年、ハイスクールスポーツの実話をもとにした映画が次々に封切られた。そのなかで全米ナンバーワンとなった2本、『フライデー・ナイト・ライツ』(邦題『プライド栄光への絆』)と『コーチ・カーター』はどちらもコーチが主人公だが、内容は完全に正反対だった。『フライデー・ナイト・ライツ』は1988年、テキサス州の田舎町オデッサの高校のアメフト部が州大会優勝を目指す実話の映画化。・・・と聞くと、よくあるスポーツ感動作のようだが、そうではない。ここで描かれるのはアメリカの「アメフト病」の凄まじさだ。

油田の町オデッサは当時、原油価格の下落で不景気になり犯罪が激増。「フォーチュン」誌の「全米で最も住みたくない町」にランクインするほど荒廃してしまった。そんな町の住民の唯一の生きがいは高校のフットボールだった。なにしろ人口たった9万人なのに高校の試合には2万人が押しかけるほどだ。

アメフト部員は貴族扱いで、授業に 出なくてもおとがめなし。酒も女もやり放題(高校生だが)。親も親で、試合で活躍できないと「選手に勉強させすぎるからだ」と教師を非難する始末で、雇われコーチのゲイリー・ゲインズ(ビリー・ボブ・ソーントン)は、朝から晩までプレッシャーをかけられて「負けたら夜逃げしかない」と追い詰められる。『コーチ・カーター』も『フライデー・ナイト・ライツ』とそっくりの状況から始まる。%年、カリフォルニア州のリッチモンド(筆者の家のご近所)は黒人とメキシコ系の貧困層が多く住む地区で、高校の成績はベイエリア地区で最低。生徒の半数が落ちこぼれ犯罪に走る。ただバスケットボール部だけは地区優勝の経験もあり、唯一誇れるものだった。

そんなリッチモンド高校に、卒業生で高校時代はバスケの名選手だったケン・カーター(サミュエル・L・ジャクソン)が帰ってくる。カーターはスポーツ用品店の経営者として成功したビジネスマン。ケガで入院したコーチに代わって3週間だけ臨時に雇われたのだ。その3週間でカーターは6試合連勝させてしまったので、学校も選手も親もカーターを正式なコーチとして迎え入れようとした。

そこでカーターは20の条件を出したが、それはバスケとは直接関係のないものだった。まず「選手はGPA2・3を維持すること」。GPAは生徒の学力の平均点で、4点が満点である。そして以下の条項が続く。「選手は絶対に授業をサボらない」「教室の一 番前の席に座る」「必ず手をあげて教師に質問する」「宿題は必ず提出する」等々。この条項を破ったら腕立て伏せ千回。

そしてGPAが2・3以上に達しない選手がひとりでもいれば試合も含めて部活を一切中止して勉強する。これには生徒も親も猛反発した。「バスケでプロになるんだから勉強なんてどうでもいい」と叫ぶ彼らにカーターは言った。「最低のGPAを維持しなきゃ大学に進学はできない。そうしたらプロもありえない。

この町の大学進学率は4%だが、刑務所に入る者はその80倍もいる。8倍じゃない。80倍だ」これは脅しではなかった。99年、数人の部員のGPAが2・3を割ったので、カーターは体育館をロックアウトして、選手に図書館で補習させた。公式試合も欠場した。B連勝して絶好調だったのに何てことを!学校側も激怒した。地域全体がカーターに敵対した。この事件は全米を巻き込む大論争へと広がった。

「スポーツ至上主義に目がくらんでいるアメリカ人の目を覚まさせた」と、カーターを絶賛する声が圧倒的だった。リッチモンド高校は優勝は逃したが、選手のほとんどが名門も含む大学に進学した。「すべてのプロスポーツ業界で選手として働く者は全米でたった2400人しかいない」とカーターは言う。 「そんな可能性の低い夢にかけて、子どもたちの将来を潰してはならない。普通の職種、たとえばマイクロソフトは1社だけで1万人以上の従業員がいるんだから」

アメリ力には星一徹がいっぱい
スポーツ教育のモンスター・ペアレンツ
テキサス州に住む8歳の少女サラは、夜明け前に家を出て朝6時街分からチアリーディングのレッスンを受ける。「眠いようママ」とグズるサラに母親のシャロンはびしゃりと言う。 「立って着替えなさい。あなたには選択の自由はないの」 ブラボー・チャンネルのテレビ番組『スポーツキッズ、マムズ&ダッズ』は毎週、そんな児童虐待まがいのシーンの連続だ。全米から選ばれた5組の。

スポーツ親子、の日常にカメラが密着取材する。 学生時代にチアリーダーになれなかった母シャロンは、娘サラがおむつのとれないころから特訓を開始した。サラは6歳にして全米大会で準優勝。しかし毎日、昼前に学校に母親が現われ、娘を早退させる。サラは週7日、ダンスやバレエのプライベートレッスンを受けている。その費用は年間1万5千ドル。鍛えられたサラは8歳なのに腹筋が6つに分かれている!

ロサンゼルス郊外に住むクレイグも学生時代はフットボール選手。だがプロにはなれなかったので、息子トレントがよちよち歩きを始めるとボールを持たせアメフトを教えた。クレイグは定職にも就かず、日雇いの肉体労働をしながら朝から晩まで8歳の息子とアメフトをするリアル星一徹。

「一流大学のアメフト部から奨学金付きで呼ばれるぞ」と夢を語るクレイグの頭には、 自分でちゃんと働いて息子の学費を稼ぐとか、息子にちゃんと勉強させて大学に行かせるという発想はない。なにしろ「宿題があるから」と息子がトレーニングを嫌がると怒ってちゃぶ台をひっくり返すのだ(ちゃぶ台はウソ)。

コネチカット州の母カレンは最近離婚した。そして、娘のカーリ(17歳)に乗馬を習わせるために自宅を抵当に入れて馬を買った。しかし馬の維持費は莫大だ。カレンは午前は教師、午後は看護師、そして夜はレストランのウエイトレスをして働いて身体はボロボロ。この番組に応募したのが出演料目当てなのはいうまでもない。 どの子どもも、他の子たちと遊んでいる姿はほとんど出てこない。たまに遊んでいても母親がその腕をつかんで「さあ、おけいこよ」と連れ去ってしまう。番組のスタッフから「子どもには友達とか勉強とか、スポーツよりも大事なものがあるのでは?」と問われたクレイグは、「いや、フットボールは本人の希望だから」と反論する。「なあ!トレント、お前はフットボールが大好きなんだろ?」。父にそう聞かれたトレントは

「・・・うん」としか答えられない。物心ついたころからそれしか知らないし、友達もいない彼には父だけがすべてだから。

試合や大会は子ども院にとって最も恐ろしいときだ。シャロンゃクレイグは客席からハッパを掛け、敵に罵声を浴びせる。子どもたちが失敗すると慰めるのではなく「お前は親に恥をかかせた」と責める。子どもは試合で勝つが、大喜びの父クレイグに対してトレント本人は笑顔もなく、ただ「パパを怒らせないですんだ」と安塔のため息をつくだけ。

アメリカでは娘をチアリーダーにするため母親が娘のライバルを殺そうとしたり、子どものホッケーの試合の判定をめぐって父親が相手の父親を刺し殺す事件まで起きている。

「USニューズ」誌例年6月7日号のピーター・ケアリーの記事によると、全米の6歳から17歳までの子どもでスポーツチームに所属している人口は2600万人。全体の約60に及ぶという。しかし、そのうち70が高校卒業までにやめてしまう。

チアリーダーの場合、たとえトップに上り詰めたとしても最高峰はダラス・カウボーイズの「カウガールズ」止まり。その年収は10万ドルに満たず、グラビアモデルなどのバイトは厳しく禁じられているし、30歳までには引退させられる。シャロンは40歳すぎた後の娘の人生について何も考えていない。

たしかに英才教育からタイガー・ウッズが生まれ、イチローが、卓球の愛ちゃんが、 亀田兄弟が、宮里藍が、横峯さくらが生まれた。が、その背景には何百倍もの子どもたちが親の夢を背負わされ、友達もつくれず、教養も常識もない人間に育てられている。ガキのころからスポーツ以外に何もなかった彼らは、プロとして成功しなかった場合、残りの人生をどうするのか?そう、自分の子どもにまた夢を押しつけるのだ。

アナボリックステロイド・スラッガーの妻が暴露本

力ンセコの巨大バットと極小ボール

「こんなオチンチン見たことない」ホセ・カンセコとベッドインしたB歳のジェシカは驚いた。

1988年に42本塁打と40盗塁を記録したアメリカン・リーグMVPのバットは大リーグ級に大きかった。しかし、その下の2個のボールはリトルリーグ並みだったのだ。(睾丸機能を回復させるクロミッドを飲んでなかったようだ)これは2005年に出版されたカンセコの元妻ジェシカの手記からの抜粋。05年2月に出たカンセコの本『ジュースド(クスリ潰け)』(邦題『禁断の肉体改造』)のモジリで『ジューシー』という書名がついている。

これがタイトルどおりのツユダクな本だった。この2冊を読み比べてみよう。

カンセコの『ジュースド』はステロイド問題に揺れる大リーグへの自爆テロだった。彼はオークランド・アスレチックス時代に「バッシュ・ブラザーズ」と呼ばれた相棒マーク・マグワイアと互いにステロイドの注射を尻に打ちあった仲だと告白した。

さらにイバン・ロドリゲス、ラファエル・パルメイロ、フアン・ゴンザレス、ジェイソン・ジ アンビなどのMVP受賞者が全員ステロイド常用者だと暴露した。書かれたマグワイアたちは「カンセコは離婚で金に困ってデタラメを書いている」と反論したが、カンセコはウソをつくような男じゃない。それは頭がよくないからだ。

「俺はウソつくのへタなんだから、問い質すなよ!」妻ジェシカに浮気を疑われたカンセコがそう言って逆ギレする場面は『ジューシー』の笑いどころだ。・カンセコの『ジュースド』はステロイドを告発した本ではない。

「ステロイドは最高だぜ!」とカンセコは開き直ってみせる。筋肉マンになれるのはもちろん、ペニスも太く大きくなってモテモテだぜ、と。逆に撃丸は収縮し、精子は全部死んでしまう。それが小さなボールの原因だったわけだ。

避妊の必要がないから便利だと喜ぶカンセコは今まで300人以上の女性とセックスしたと自慢している。「でも、セックスは超ひとりよがりだったわ」とジェシカは書く。カンセコはまったく女性を感じさせようとしないばかりか、いつもバックで攻めながら、寝室の壁の大きな鏡に映ったギリシャ彫刻のように美しい自分の顔と身体を見て、ウットリと射精するというのだ(おまけに避妊具をつけないから、ジェシカは同居していた8年間に4回も病気を感染させられている)。

「ステロイドは使い方さえ正しければ副作用はない」とカンセコは言いきるが、そこで も妻の言い分は違う。「90年代のカンセコは故障ばかりだった。それはステロイドで人工的に強化された筋肉に身体が耐えられなくなったからだと思うわ」ステロイドの副作用として最も問題になっているのはうっ病だ「ホセは自宅にいるときは何も言わず、何もせず、じっと座って塞ぎ込んでいた」大学や高校のアスリートが何人もステロイドのために自殺し、遺族はステロイドの厳しい規制を訴えている。

うつと同時シンセコは猫疑心が強くなり、いっも私立探偵を使って妻を監視していた。おまけに激昆するとコントロールできない。ステロイドの副作用による「ロイドレイジ」だ。前妻(ミス・フロリダ)の自動車をフリーウエイでカーチェイスして彼女を殺しかけたこともある。夫の浮気に愛想が尽きたジェシカがあてつけのためにNFLカンザスシティ・チーフスのトニー・ゴンザレスと浮気したとき、カンセコは「ストリートスイーパー」を取り出したと自分で『ジュースド』に書いている。

「サメを撃つために買った」というストリートスイーパーはB連発ドラム弾倉つきショットガンで、その名のとおり、これ1挺で街を制圧できる火力を誇る。カンセコはその銃身を自分に向けて引き金を引こうとしたが、生後数カ月のひとり娘の泣き声で我に返ったという。「あたしが1回浮気したぐらいで大げさね」ジェシカは笑う。

「自分は何百人もとして るくせに」ある日、ジェシカは夫の携帯にかかってきたガブリエルという女の電話をとってしまった。彼女はニューヨークのコールガール組織の元締めだった。「うちの亭主はたいしたお得意様なんでしょうね!」と怒ったジェシカだが、ガブリエルは、こう答えた。「あんたのダンナはクズだよ」カンセコは部屋に呼びつけたコールガールに「ほら、スーパースターと寝られるんだぜ」と言って逆に金を要求していたのだ!とうとうジェシカは、クラブで美女を誘って自宅に連れ帰り、カンセコにあてがうようになる。知らないところで浮気されて苦しむよりは目の前でされたほうがマシと思ったのだ。それにしても、こんな男とどうして何年も結婚していたのか?

ジェシカはオハイオの貧しい家庭出身の田舎娘で、教師だった父親は家ではまったく口をきかず、娘への愛情を示さなかった。ジェシカは幼いころから冷たい父親の関心を引こうと、必死で可愛く振る舞ってきた。

カンセコもジェシカとの間に会話がなかった。彼女の気持ちに無関心だった。たまに口を開くと「君のその鼻、大きすぎるな」。ジェシカは夫に愛されようと何度も整形手術を繰り返した。カンセコがジェシカと話さないのは話題がないせいでもあった。少年時代に母を失っ たカンセコは父親から野球だけを教えられ、野球以外には何も知らなかった。父シ子を決して誉めたことがなかった。大リーガーになっても「お前は役立たずだ」と罵り続けた。父に植えつけられた自己嫌悪の裏返しがカンセコの自己愛につながっているのでは?とジェシカはちょっと同情する。

『ジューシー』には最後にサプライズがある。ジェシカの父が心臓発作で急死し、故郷に帰った彼女は父の遺品から手紙の束を見つける。それは父の恋人たちからのものだった。恋人たちは男性で、女性の下着をつけて化粧して肝門にディルドー(性器の形をしたコケシ)を挿し込まれる父の写真が次々に出てきた。

真面目で無口な老いた田舎教師の本当の姿がそこにあった。人生、どこにでも闇が隠れている。 『ジューシー』で夫以上に軽蔑の対象となっているのは他の選手の妻たちだ。ステロイドも女好きもカンセコだけの問題ではない。でも、彼女たちはセレブな生活と引き換えに、闇から目をそむけ、自分を偽っている。 「わたしはもうたくさん」 ついに離婚したジェシカは莫大な財産を分与され、『ジューシー』発売と同時に「プ レイボーイ」誌でヌードを披露した。夫のために改造を繰り返したボディを。

生卵イッキとペ二ス増大器の産みの親

健康教の教祖バーナー・マクファーデン
59歳のシルベスター・スタローンが再びリングに立った『ロッキー・ザ・ファイナル』(06年)を観た。レストランの経営者として静かに暮らしていたロッキーが、世界チャンピオンとのエキシビションマッチに招待されるという、必然性も緊迫感もないストーリーについては、文句を言ってもしょうがない。

名曲『ゴナ・フライ・ナウ』をBGMにロッキーがサンドバッグ代わりに肉を叩き、フィラデルフィア美術館の階段を駆け上がる、それだけで涙腺が緩んでしまう。おなじみの生卵を5?6個割ってコップでイッキ飲みも、ひさびさに登場。30年前の中学生はみんなマネしたもんだ。この。生卵イッキ飲み、はどこから始まったのか?

調べてみると100年以上前に。世界で初めて健康を産業にした男、バーナー・マクファーデンまでさかのぼれる。1866年、アメリカに生まれたマクファーデンは背が低く疫せっぼちで病気がちな少年だったが、そのコンプレックスに打ち勝つべく、当時始まったばかりのボディビル ディングで身体を鍛え上げた。さらに栄養学を学んだマクファーデンは独自の健康理論を確立し、それを出版した。

「身体が弱いのは罪だ。犯罪者になるな!」という過激なスローガンを掲げたマクファ ーデンは、生卵や牛乳、野菜とビタミンの重要性を説き、肉やジャンクフードの危険性を警告して全米各地を回った。そして講演会では自ら服を脱いでギリシャ彫刻のようにたくましい肉体を披露した。 マクファーデンはトレーナーとしてチャールズ・アトラスというボディビル選手を育て、数々の大会で優勝させた。

そしてアトラスに観客の前で生卵をゴクゴク飲ませた。卵を生で食べる習慣のないアメリカ人にはショッキングだったろう。ここから生卵伝説、が生まれたのだ。 99年、マクファーデンは雑誌「身体文化(フィジカルカルチャー)」を創刊。これが爆発的に売れた。健康な肉体の見本として、ボディラインがはっきり見える下着姿の女性の写真を載せたからだ。

まだ厳格なピューリタニズム(清教徒主義)が残っていた当時のアメリカでは、これでも立派にエロ本の役目を果たしたのだ。

さらに「身体文化」は、セックスを健康的な行為として奨励し、性病の恐ろしさを解説した記かし、セックスについていかなる出版も許されない時代だったので「身体文化」は、わいせつ図書とされ、マクファーデンは逮捕された。

それでもマクファーデンはあきらめなかった。彼は「身体文化」の読者から寄せられた病気や恋愛に関する体験談だけをまとめた「実話(トゥルーストーリー)」マガジンを出版した。これが祀き見趣味を刺激して大当たり。続けてマクファーデンは「恋愛実話」「怪奇実話」「犯罪実話」マガジンを次々に創刊し、巨大な雑誌帝国を築き上げた。女性週刊誌や実話雑誌は、ここから生まれたのだ。

マクファーデンは新聞王ピューリッツァーに匹敵する億万長者となり、ホテルやレストラン、大学までも経営した。そのすべてが健康、をコンセプトにしていた。今では当たり前になったスパやジムを完備したホテルや健康食レストランの先駆である。ボディビル用品の通信販売も大成功した。それだけじゃない。

ひ弱で不良にイジメられていた少年がボディビルでたくましくなって女のコにモテモテ、というマンガによる雑誌広告も、マクファーデンが始めたのだ。さらに「健康な者だけが天国に行ける」を教義に新興宗教「コスモタリアニズム」まで立ち上げた。 マクファーデンは奇人として有名だった。

60歳すぎても人前で裸になって衰えぬ筋肉美を見せつけたが、服にはまったく興味がなく、億万長者のくせにいつもボロ服を着ていた。 それに若い娘とのセックスが大好きだった。エロ本の広告でおなじみ真空ペニス増大器も彼が発明した!生涯に4回結婚し、最後は80歳で36歳下の女性と結婚したが、

80歳過ぎても浮気癖は直らず離婚した。マクファーデンは離婚のたびに妻に財産をとられ、さらに新興宗教や大学の経営にも失敗したので、87歳で死ぬころにはすべてを失っていた。

ただ、最後の妻に「100万ドル以上をあちこちに埋めた」と言い残していた。死後7年目の1960年、彼が所有していたロングアイランドの土地から金属のケースに収められた現金9万ドルが発見され、今も人々はマクファーデンの宝を探し続けている。

健康文化の祖マクファーデンだが、生卵に関してだけは間違っていた。生の卵白に含まれるアビジンはビオチン(ビタミンH)を吸収し、脱毛や皮膚炎を引き起こすことがある。また、サルモネラ菌感染の恐れがあるのでアメリカ政府は卵の生食をしないように、といっている。 ロッキーも面倒くさがらずに卵はゆでたほうがいいよ!

クリス・ベノワの悲しきラブストーリー

ロイドレイジが一家心中の原因か?
2007年6月25日、ジョージア州アトランタ郊外の自宅で、WWBへビー級チャンピオンだったプロレスラー、クリス・ベノワが首を吊って死んでいるのが見つかった。

彼は家庭の事情で試合を休むとWWEに知らせていた。家の中では、妻ナンシーと7歳の長男もそれぞれの寝室で死んでいた。ベノワによって枕を顔に押しつけられての窒息死だった。警察は無理心中とみているが、なぜか遺書が見つかっていない。

ベノワは90年代、新日本プロレスで覆面レスラー、ペガサス・キッド(後にワイルド・ペガサスに改名)として、獣神サンダー・ライガーや金本浩二、大谷晋二郎らと激しく戦い、ジュニアへビー級の黄金時代を築いた。ベノワは伝説的ジュニアヘビー級選手ダイナマイト・キッドを崇拝し、キッドのようにノンストップで攻撃し続けて日本の観客を熱狂させた。 WWEに入ってからも日本仕込みのストロングスタイルでスターになった。

アトランタ五輪金メダリストのカート・アングルに対して一歩も引かぬグラウンドテクニックと 関節技、自爆も辞さぬ空中殺法、サプウの首の骨を折って「壊し屋」「凶獣」と恐れられたエクストリームな試合ぶり、他のアメリカンレスラーと違って寡黙なぶん全身で感情を語る表現力で、「最も尊敬されている現役レスラー」とさえ呼ばれた。

そのベノワがなぜ?

WWEは妻子を殺したベノワのフィギュアや子ども向け商品を市場から回収した。動機はいろいろ憶測されている。まず有力なのは、ステロイドの副作用で怒りがコントロールできなくなるロイドレイジで衝動的に妻を殺したという説。

実際、数年前にナンシーは家庭内暴力でベノワを訴えている(後に取り下げた)。3年にもWWEではベノワの大親友エディ・ゲレロが、薬物の乱用が原因による動脈硬化で急死している。

アメリカのプロレス界全体でも近年、相当な数のレスラーが次々と死んでおり、過酷すぎる試合と、痛み止めやステロイド潰けのプロレスというスポーツそのものの存続が問われている。バッシングの標的になったWWEはロイドレイジ説を否定して、ベノワの長男が脆弱X症候群という精神発達障害だったことを苦にしての心中ではないかと主張している(祖父母は孫は健康だったと証言している)。

いずれにせよ、ベノワの死は永遠に謎だろう。だが、彼と妻ナンシーとのなれそめはプロレスファンなら誰でも知っている、というか観ていた。 ナンシーは父娘ほど年の離れた悪役レスラー、ケビン・サリバンの妻だった。

サリバンはWCWでレスラーとしてよりもブッカー(対戦の組み合わせを考える人間)として力を振るっており、妻ナンシーに他のレスラーのマネジャーをやらせていた。彼女はメガネっ娘のオタクスタイルでリック・スタイナーのセコンドについたり、サンドマンのイッキ飲みパフォーマンスのために缶ビールを手渡したり、レスラーたちの「女」を演じ続けた。 そんなナンシーにサリバンが与えた芸名は「ウーマン」。

つまりただの「女」。 人格など認めないってこと?サリバンのほうはプッキングの権力を使って、他の女性タレントたちを食いまくっていたようだが。 ところがナンシーが反乱を起こした。彼の留守中にベノワと浮気をしたのだ。

ベノワはナンシーといちゃつくビデオを試合会場で上映した。呆然とするサリバンだったが、それもサリバン自身でシナリオを書いたアングル(芝居)だった。妻を寝取った二枚目ベノワと、彼を潰そうとする権力者サリバンとの抗争が続いた。 そしてついに、サリバンの引退試合でベノワが勝利しナンシーを奪い取った。その背後でいつしかアングルは現実になっていた。ナンシーは、自分をただの「女」ではなく「ナンシー」として認めるベノワを愛すようになり、とうとうサリバンと離婚してベノワのもとに走ってしまったのだ! これには黒幕サリバンも驚いた。

引退して専任のブッカーになった彼は、私怨まる出しでベノワをブッキングや判定で徹底的に冷遇し、ついにはWCWからイビリ出してしまった。しかし、WWEに移籍したベノワはスターになり、ベノワと一緒にエディ・ゲレロたちを失ったWCWは視聴率急落で倒産した。 芝居が現実になり、愛が権力に勝った、めでたしめでたしのラブストーリーだった。それなのに・・・

さまよえるサーファー大家族
現代のノアの方舟、パスコヴィッツ一家
『エンドレス・サマー』(邦題『終りなき夏』/66年)とは最も有名なサーフィン映画のタイトルだが、本当に「終りなき夏」を生きようとした男がいる。その名はドリアン・パスコヴィッツ、1921年生まれ。映画『サーフワイズ』(07年)は、赤銅色に日焼けした筋骨たくましい老人ドリアンがロングボードでサーフインをする場面から始まる。

ドリアンは8人の息子とひとりの娘を全員サーフィンのチャンピオンに育て上げた。ドリアンが経営するサーフィン学校は今や全米のセレブの御用達。サーフインフアッションのプランド「パスコヴィッツ」も人気だ。

この成功は、ドリアンが9人の子どもを学校に行かせず、小さなキャンピングカーに詰め込み、いい波を求めて全米を放浪し、ひたすらサーフィンだけをさせて育てた結果 だ。 ドリアンはテキサスに生まれ、m歳のとき、ハワイからアメリカ本土に伝わったばか りのサーフインに出会った。「大自然と一体になれる最高のスポーツだ」と感動した彼は発祥の地ハワイに渡って修業した。

その後、ドリアンは名門スタンフォード大の医学部を卒業し、連邦公衆衛生局の研究員に招かれた。ハンサムでマッチョでスポーツ万能でインテリでリッチなエリート中のエリートだったドリアンだが、ある日すべてを捨て た。 ナチスドイツ兵がユダヤ人の母親を赤ん坊もろとも射殺する写真を見たからだ。

「私は万能で完壁で無敵だったが、その母子を救うことだけはできなかった」ユダヤ系のドリアンは、もしヨーロッパに生まれていたらナチスのホロコーストの犠牲者になっていたかもしれなかった。彼は職をなげうって、イスラエル軍に身を投じようとしたが国籍の問題で無理だった。その代わりサーフィンをイスラエルに伝道して、アメリカに帰った。その間、ドリアンは女性と片っ端からセックスし、彼女たちのセックスを100点満点で採点した。完璧な妻を探すためだ。ついに最高点100点を記録したメキシコ系アメリカ人のジュリエットと結婚し、キャンピングカーでアメリカ放浪を始めた。妻は次々に妊娠し、移動しながら子どもを産んでいった。

「ホロコーストで失われたユダヤ人を私が増やして、地に満たすんだ」そう言ってドリアンは子どもたちにアダム、モーゼ、デビッドなどイスラエルの始祖 たちにちなんだ名前をつけた。ドリアンはアメリカの海岸沿いを移動しながら、医者として貧しい人々を治療した。金はとらなかった。サーフィンコンテストの賞金だけが収入だった。子どもたちは野菜と穀物だけで育てられた。

卵も肉も菓子も砂糖も食べさせなかった。貧しいからだけでなく、「野生動物と同じものを食べれば健康になるはずだ」というドリアンの思想だった。子どもたちは常に上半身裸で、朝から晩までサーフィンをし、夜は母親からギターを教えられた。永遠の夏休みが続いたのだ。社会のあらゆる束縛から自由な王国を作ろうとしたドリアンだが、家族に対しては自由を許さぬ暴君だった。こっそり菓子を食べたりトレーニングをサボれば星一徹以上の鉄拳制裁が待っていた。

ドリアンは憎むべきヒットラーと同じ独裁者になっていた。そもそも過剰な健康志向や肉体礼賛はナチのお家芸だ。ドリアン夫婦は毎晩セックスをした。とびきり激しいやつを。一部屋しかないキャンビングカーの中で、子どもたちは耳を塞いで耐えた。「セックスはすばらしいものだ」と父は教えたが、社会から隔絶された子どもたちには異性と知りあう機会すらない。身体が大きくなった息子たちはついに父親に反乱を起こし、結局みんな家を出ていってしまった。

独立した後、息子のひとりは父と同じ医者を目指して勉強を始めたが「10年間の学業 の遅れは取り戻せなかった」と唇を噛む。「父に人生の可能性を奪われた」『サーフワイズ』の最後で、家族を失ったことを悔やむドリアンのもとに恩讐を超え て子どもたちが10年ぶりに集まり、父を許す。ドリアンはサーフワイズ(サーフィンに 精通した者)だったが、大人になることができず、子どもたちにエゴを押しつけた。そ の過ちを認めたとき、彼のエンドレス・サマー、はようやく終わったのだ。

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