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アナボリックステロイド体験談

      2016/05/31

アナボリックステロイド体験談

安倍はトレーニングを、二日やって一日休む、2オン1オフ、という形でプログラムしている。
全 身を三つのパートに分け、一回のトレーニングでは一つから二つの部位を鍛える。一日目は胸と背中、 二日目は肩と腕、一日休んで脚。そして翌日は再び胸と背中に戻り、また休む。こうして一週間に五 日トレーニングするスケジュールをこなす。腹筋やふくらはぎ、前腕、僧帽筋といった細かな筋肉は 適宜メニューに入れていく。一回のトレーニング時間は一時間もない。ひとつの部位に対して三、四 種目を選び合計で10セットほど行う。 ジムに姿を現した安倍は、ストレッチで全身の筋肉と臓、関節をゆっくりと伸ばす。その日は胸と 背中のトレーニングだった。彼はまずべンチ台に向かった。最初は70キロでウォーミングアップだ。 両端に25キロのプレートを付けたバーが、リズミカルに上下する。回数(レップス)は優に20を 数えた。バーを置いた彼は、軽く首を左右に振ると、プレートを重ねて120キロにアップさせた。 このセットの目的は、ウォーミングアップで暖まった大胸筋に、ある程度の重さを実感させるために ある。安倍はゆっくりとバーを胸元まで降ろすと、同じようなスピードで腕を伸ばしていく。本来な ら10回以上こなせるが、ここは四回に抑える。それでも、こめかみには血管が浮かび、バーから離 れた安倍は肩で息をしていた。

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二分近いインターバルがあっただろうかー安倍は短く息を吐くと、重量を一気に220キロまで 上げた。オリンピックバーと呼ばれる、最長のバーがプレートの重みでしなる。「ウオッ」という気 合と同時に、バーが彼の手に委ねられる。両方の頬の筋肉がピンポン玉のように膨らみ、目尻に深い 鍛が刻まれた。尾紙骨と肩甲骨をべンチに押し付け、背中全体でアーチを描きつつバーを降ろしてい く。最初は肩の付け根あたりで発生した熱い痺れが、大胸筋へと移動してきた。胸のふたつの頂が隆起し、谷間に何本も筋が走る。ひとつの動作を行うたびに、胸に向かって身体中の血液が向かって来 るのがわかる。これだけのウエイトになると、六回のレップスを行うのが精いっばいだ。
激しく腕を座撃させながら、何とかバーをラックに戻した彼は、しばらくべンチの上で荒い呼吸を 繰り返す。起き上がっても、視線は床を見つめたままだ。胸には血管がくねり、その大きさと形はド ッジボールを並べたようだ。首筋には内出血のような斑点が浮かんでいる。トレーニングを重ねるう ち、知らぬ間に鼻血が流れていたこともあった。 べンチプレスはこれだけ、たった三セットだ。この日、彼は胸を三種類、背中も三種類のトレーニ ングを行ったが、すべてがこのようなペースだった。
「僕の行うセット総数は決して多くありません。だけどトレーニングの質が高ければ、これだけで充 分だという自信があります。人間はどこまで大きく強くなれるのか。筋肉の発達する限界はどこなの か。できれば、それを自分自身で極めてみたいボディビルを始めて、こういった思いに駆られる のにそれほど時間はかかりませんでした。あるいは、こんな考えをもともと自分は無意識下に持って いたのかもしれません」 彼のトレーニング内容については、その濃さを認めながらも、アナボリック・ステロイドの卓越した効果のひとつ、驚異的な回復力を指摘したビルダーもいたことを付記しよう。 彼はパートナーと組まない。
ボディビルは自己完結すべきものだと考えているからだ。それにパー トナーがいると、つい補助に頼ってしまい発揮すべき最後の力を出し切れなくなってしまう。また不用意な補助はオーバートレーニングを誘発する原因にもなる。オーバートレーニングは激しい筋肉痛 だけでなく、筋断裂や腰、関節を負傷する原因ともなる。重度の俺怠感、集中力の欠如、トレーニング意欲の喪失などもオーバートレーニングの弊害だ。
「ほどよい筋肉痛や軽いリンパの腫れ、奥歯の噛み合わせの違和感などはトレーニングにつきもので す。だけどトレーニングで疲れ切ってしまっては逆効果です。そのほんの数歩手前で切り上げること が大切なんです。トレーニング後はすぐに、破壊された筋線維を補修し強大にするためアミノ酸を補給し、失った炭水化物を摂取します。
できれば食後は成長ホルモンの分泌を高めるために横になるの がいい。ほら、寝る子は育つっていうでしょう。自分の体調を見極め、このタイミングを的確につか むのもボディビルダーとしての才能のひとつなんです」 彼はいつも淡々とした調子で話すが、声のトーンは高い。電話口の息遣いの荒さに驚くこともある。
まるで力士と話しているようだ。ただ物腰はソフトかつていねいで、彼を知る人たちの話でも、激昆 したり大声を出しているところを見たことがないという。物静か、落ち着いている、というほかに、 どこか荘洋としたところがあるという声もあった。切れ長の目と通った鼻筋、高い鼻梁が、彼のやや 面長な顔にメリハリをつけている。高重量を扱うボディビルダーの例に漏れず、顎も頑丈そうだ。ち ょっと見には白人種とのハーフやクォーターのようにも見える。 安倍の人生におけるプライオリティは、何にもまして筋肉を肥大させることだ。今は趣味らしい趣 味もないが、学生時代にはよく哲学書や小説を読んだり、クラシック音楽を聴いた。
読書ならニーチ ェにゲーテ、小林秀雄など。音楽はワーグナーとシューベルトを愛聴している。 「どちらかというと、物事を論理的に考え突き詰めていくほうです。崇高、孤高、克己といった言葉 に魅力を感じます。のどかに夢を語るのではなく、それが実現困難なものであっても力を尽くして到 達する努力を続けていきたいんです」

ボディービル界のドーピング検査

日本のボディビル界が最初にドーピング検査を実施した大会は、八六年七月に行われた世界・アジ ア男子女子選抜選手権大会だ。ここでは男子四人、女子一人に陽性反応が出て失格となった。このときの失格者のひとりに会った。

そのビルダーを仮に藤沢章太とする。藤沢が初めてアナポリック・ステロイドを入手したのは国内 の選手ルートからだった。そして渡米して本格的にステロイドに手を染めた。 藤沢は二十代半ばで全国規模のボディビル大会に優勝し、八○年代初頭にはアメリカで開催された 国際大会で上位入賞した。国際大会のために仕上げた体重は七六キロだったという。この大会出場時 まで、薬物は一切使用していない。 「七○年代半ばを過ぎた頃には、もうアメリカのボディビル界でアナボリックステロイド使用は常識になっていた ようです。日本人ビルダーの耳にもアナボリックステロイド剤の噂はチラチラと耳に入っていました。

でもそれは 僕にとって、あくまでも海の向こうの話でした」 その威力を肌で知ったのが、国際大会のステージだった。 「国際大会に出場しアメリカ勢と戦ってみて、ステロイドを使わなければ永遠に勝てないと思いまし たね。何しろ丸腰で武装兵士にかかっていくようなものですから。あの頃の心境としては、虎穴に入らずんば虎子を得ずという感じでした。後遺症のことを教えてくれる人はいなかったし、それほど情報もありませんでした。国際大会で空しい思いをしただけに、あちらがその手で来るならこっちも、という心境でした」 当時はまだ世界中の、どのボディビル団体もドーピング検査を実施していない。いわばドーピング はルールの範囲だった。

アーノルド・シュワルツェネッガーも、ボディビルダーとして最盛期だった この時期、ステロイドを使用していたことを認めている。 藤沢が最初にアナボリック・ステロイドを手にしたのは八四年のことだ。帰国早々ある日本人ビル ダーに、海外で勝ちたいと相談したのがきっかけとなった。相手は70年代初期に世界大会で優勝しており、アナボリックステロイド使用を公言こそしていなかったものの、その噂は根強かった。彼は一時ジムを経 営していたが寸借詐欺や暴力事件を起こし、現在は事実上ボディビル界から追放状態だ。 持ちかけた相談、の中身が、暗にステロイドの横流しを依頼するものだったことは藤沢本人も認 めている。数日後、藤沢は「海外ビルダーに勝つため」に1シート10錠の経口ステロイドを10シ ート手渡された。値段は4,000円だった。指示通りに食後に2錠ずつ飲んでいたが、半分ほど使っても何の変化もなかったので残りは知人に譲ったという。

そんな彼が本格的にステロイドを使用するのは、アメリカへ半年のボディビル留学をしてからだっ た。そのときも藤沢は、現地にいた別の日本人ボディビルダーに薬物調達を依頼している。そのビル ダーを訪ねたのは、彼に頼めばアナボリックステロイドを売ってくれるという話が嘘かれていたからだった。藤沢 が経口錠剤を試したが効かなかったと言うと、現地の日本人ビルダーはデカデュラボリンという脂溶性注射薬を奨めた。注射は日に一回尻に打つ。費用は六週間分で二○○ドルと決して安い買い物では なかったが、少しでも身体を大きくしたいと願っていた藤沢は金を払った。

日本ではどれだけトレー ニングを重ね栄養に気を配っても頭打ちだった体重が、三か月で10キロ増えるという劇的な効果が現れた。当然パワーもつく。向こうのウエイトマシンの重量設定は、日本のと比べものにならないく らい重いが、彼は帰国前にどのマシンもいちばん下のピンでトレーニングしていた。 体重100キロを超えて帰国したが、藤沢は帰国後ドーピングをしていない。アナボリック・ステロイドの後遺症によって免疫系に疾患が出たからだ。とにかくちょっとしたことで風邪をひきやすく なり、ほんの少しのトレーニングで何日も熱が出た。彼は凱旋記念コンテストとなるはずだったミスター日本で、予選落ちという惨敗を喫している。本来の調子を取り戻すのに服用中止から半年以上か かった。藤沢は再起を懸けて八六年の世界・アジア選抜大会に挑んだ。 「この大会で初めてドーピング検査が実施されるのは知っていました。もう使用をやめて一年以上に なるし絶対に大丈夫と思ったのですが」 薬物で膨らんだ身体は、八五キロほどの肉体に戻っていた。この大会での写真を見てみると巨大さ は感じられず、むしろ筋肉を彫刻刀で刻み込んだという身体だ。だが脂溶性のステロイド類は、使用 をやめても二年間以上も体内に残留するといわれている。藤沢は三位になったが試合後の薬物検査で 陽性反応が出て、日本ボディビル界の公式記録に残る最初のドーピング違反者となってしまった。

ドーピング違反者たちについて、JBBFの玉利会長はこう語っている。 「ボディビルにとってステロイド剤というのは、原爆みたいなものなんです。哲学なき科学の発展が 原爆を作ったわけで、ボディビルとアナボリック・ステロイドユーザーの関係もそれとよく似ている。 ボディビルをスポーツとして認知していただくためにも、絶対に原爆を戦いの場に持ち込んではいけ ない。

僕たちはボディビルというスポーツを通じてヒューマンリアリティを追求すべきです」 実際問題として、ドーピングチェックには金がかかる。その費用は一人一回二万円以上という。予 算の少 ない団体では、とても選手全員をチェックすることはできない。JBBFとて予算が潤沢とい うわけではないが、それでもできる範囲でドーピング検査を励行している。玉利は続ける。 「IFBBは二○○八年のオリンピックで競技としてボディビルを認可させようと躍起になっていま す。そういう見地からいえば、ドーピングを避けられないプロと、ナチュラルであるべきアマチュア を完全に分離し、少なくともアマチュア選手のドーピングチェックは日本並みにするべきです」 日本にプロ・ボディビルの制度はない。

国内のボディビル大会で優勝してもトロフィーがもらえる だけで基本的に賞金は出ない。それにもかかわらず、国内にもアナボリックステロイド使用者がいるという事実は 何を語っているのだろう。九八年にJBBFが検査した三十六人中、過去最大数の七人が陽性反応を 示している。かつて違反者は首都圏の選手が突出していたが今回は地方にも分散した。内容はやはり ステロイド系薬物が五人と目立つ。これにはアンドロステンディオンも含まれる。

重複使用だが興奮 剤のエフェドリン(葛根湯をはじめとする風邪薬にも含まれる)、最近IOCが禁止薬物に指定した 成長ホルモンのDHEAも使用者が増えている。エフェドリンは元気になる、とか疫せる、とい う名目、DHEAも若返り、を謳うアメリカ産のサプリメントによく使用されているから、有名メ ーカーのサプリメントだからと安心して服用していると、ドーピング検査に失格してしまう可能性も高い。事態を重くみたJBBFでは、これまで以上に薬物検査を強化することと、抜き打ち検査の徹 底を明言した。

爆発的ともいえる国内の違反者の増大を知って、安倍はシニカルな言葉を投げ 「やっばりオリンピックのドーピング騒動やマグワイア選手の影響は否定できな での失格者が増えたというけれど、それまで単に見過ごされていただけなんじゃないでしょうか 。

しかし今回の違反者たちの中に、命を懸けてまでボディビルに取り組もうという選手がいたかどうか。 てっとり早く身体をつくりたいという発想の人には、アナボリックステロイドほど魅力的なものはないでしょう。 だけど単に身体を変身させたいのなら、整形外科的に異物を注入して大きくすればいい。でも自分は、 身体をただの容器でなく、自分という人間の意志の発露としたい。肉体は実態としてのパワーとそれ を引き出す強靭で巨大な筋肉を備えていなければならない」 彼は、常人の理解を越えたところにボディビルの目指す至高の境地があると考えている。だから、 世間のボディビルに対する偏見にもさほど興味はないという。世間が彼をグロテスクと嗤(わら)うのなら、 それでもいい。むしろ世間の基準から大きく逸脱した肉体であるほうがうれしい。気持ち悪いという のは褒め言葉でもある。この肉体は自分のプライドを具現したものであり、この世に生きる証明だ。  「自分の肉体が張りぼての筋肉でないことは自分がいちばんよく知っています。腕回りが1センチ大 きくなった時、1キロでも重いウエイトを挙げた時にそれまでとはまったく違った世界が開けてくる んです」 日本人のトップビルダーたち、特に世界をステージにしてアナボリックステロイドユーザーと戦った経験のある 者は、口を揃えて「それでも薬物を使わずに身体を大きくしたい」とナチュラルにこだわる。

「ひとそれぞれのボディビルに対する理念や信条に対して、とやかく言うつもりはありません。です がナチュラルのままで日本人が到達できる肉体は想像がつきます。ミスター日本で何連覇もしている チャンピオンでも、世界に出れば予選すら通過できない。自分はそれでは絶対に満足できないんです。

できれば世界でも比類のない巨大な身体を手に入れたい。願いはそれだけです。近道があるのなら、 遠回りをするよりそちらを選びたい。限界や可能性を超越するのは、ナチュラルのままでは絶対に無 理なんです」 安倍はこう反論した。

筋肉にまつわる先天的な素質からいうと、黄色人種は先天的にマイナスを背負っている。81年と 83年に国内最高峰のミスター日本に輝き、現在は東京大学教養学部教授で生命環境科学の専門家 石井直方は言う。 「黒人種と白人種が懸命にトレーニングして筋肉をつけた場合、脂肪を除去した体重、つまり筋肉と 内臓、骨格の重さが九○キロ、黄色人種なら八○キロ前後が限度です」 医学上の見解では、遺伝子変異や突然変異でもない限りこれらの数値を超える筋量は身につかない。 ところが、プロボディビルダーのコンテストで最高のタイトルといわれる「ミスターオリンピア」に 出場する選手たちは、脂肪を極限まで絞った身体でありながら、軒並み100キロを超えている。ちなみに過去ミスターオリンピアに出場できた日本人男性は一人もいない (ミズやシニアにはそれぞれ 一人ずついる)。 近年は運動生理学にも遺伝子レベルのアプローチが盛んになってきている。

石井は、九七年にイギ リスの科学雑誌「ネイチャー」五月号やアメリカの「サイエンス」九月号などで発表されたァシュワ ルッェネッガー遺伝子、の話をしてくれた。シュワルツェネッガー遺伝子とは、アーノルド・シュワ ルッェネッガーに因んだ、この遺伝子のニックネームで正式にはGDFー8遺伝子という。 記事によると、遺伝子の中に生物を巨大化させないため、成長をブロックする因子があることがわ かった。ある一定の生物が巨大化すると、他を圧倒して繁栄してしまい地球環境のバランスが保てな くなるからと推測されている。この因子が遺伝子に組み込まれたのは、恐竜やそれに続く巨大哺乳類 の時代の教訓なのだろうか。現実問題としてGDFー8遺伝子は、胎児が母胎の中で必要以上に巨大化しないというような役目を担っていると考えられている。成長をブロックする遺伝子に関する研究 は食肉牛や豚などに応用され、食糧危機問題の解決を目的に行われている。遺伝子を操作されたマウスは、何の運動もさせていないにもかかわらず通常個体の三倍、牛では三割という筋肉増加を実現さ せた。さすがの石井も、GDFー8遺伝子破壊マウスや牛の写真を見て、その巨大さに絶句したとい この数値を人間にあてはめると、白人種で一五○キロ近い筋肉を持つことができる。腕や関節、骨 の強度の問題を無視すれば、運動能力としては一トンのスクワットが可能になる。スクワットとはバ ーベルを肩に担いで足を屈伸させる運動で、数あるウエイトトレーニングの種目でも最もきついエク ササイズだ。

もしアナボリック・ステロイドを併用したとしたら効果は倍増し、本当の意味での筋肉 モンスターが生まれることだろう。 さらに衝撃的なことにIGF-1という遺伝子があって、この遺伝子は直接的に筋肉を大きくする 作用を司る。IGF-1をウイルスに組み込んで注入した筋肉は、その部位だけ極端に肥大すること がすでに動物実験で立証された。しかもIGF-1を注入しても血液検査や尿検査では検出不可能で、 筋肉組織の破片を調べるしか方法はないとされている。

遺伝子情報にまつわる解析は急速に進んでおり、2001年にはヒトゲノムの全容がほぼ明らか されるはずだ。そう遠くない将来に遺伝子ドーピングが登場する可能性は極めて高い。そんな現況 石井は警鐘を鳴らす。 「遺伝子操作の効用に関してはともかく、その副作用や将来に起こり得るかもしれない危険性に関して、今はほとんど研究がなされていない状態です。GDF-8やIGF-1を活用すれば、間違いな く巨大な筋肉を手に入れられますが、そのマイナス面も計り知れません。それに遺伝子操作による筋 肥大は人間の尊厳の問題、いわば創造主に関する領域に入ってきます。ボディビルダーなら筋肥大へ の想いは強烈でしょうが、薬物や遺伝子操作に頼らずトレーニングを重ねてほしいものです」

実際にアナボリックステロイドを服用した体験

安倍がアナボリック・ステロイド服用を決心したのは二十二歳、大学三年生のときだった。当時の 体重は七七キロで、本格的にボディビルに取り組んで三年目を迎えていた。

彼はこの頃、まだアナボリックステロイドを服用していない段階で、ある地方コンテストのジュニア部門に挑戦 している。彼の身体は年々驚くべき進歩を示していた。ジムのコーチもコンテスト参加に反対しなか った。だが誰も優勝を口にはしていない。周囲は、ボディビルダーとして一歩一歩経験を積み、着実 に階段を昇っていってほしいと願っていた。ボディビル界では浅いキャリアにもかかわらず、センセ ーショナルにコンテストデビューを果たす逸材も少数だが存在する。だがそれは例外中の例外と断言 していい。

ミスター日本の常連たちも、かつては予選落ちといった屈辱を営めながら、年々地力をつ けてトップレベルへ這い上がってきているのだ。筋肉は一朝一夕では完成しない。天才と呼ばれた選 手でも六、七年、並の者なら十年以上の歳月を必要とする。 「そういうことは自分でも重々わかっていました。でも自分がおかれている座標軸の位置を確認した かったんです」結果は予想通りのものだった。一般人からすれば目を見張るような彼の身体もーあるいは の低い地方大会なら優に優勝を狙えた彼の肉体でも入賞止まりだった。彼もまた将来有望な選 違いなかったが、おそらくこのとき、彼の肉体と名前に強烈な印象を抱いた審査員や観客はい ただろう。

「優勝者の身体を見てもそれほど感動しませんでした。このままトレーニングを続けていけば、自分 もいずれは優勝者を凌ぐレベルに達することができると思いました。だけどそのとき、おそらく自分 は三十歳を越えてしまっているんです。それではとても理想とする人知を超えた肉体は実現できない。 三十を過ぎると基礎代謝が格段に落ちるうえ、筋肉組成の機能も下がってしまう。自分は生き急いで いるのかもしれない。だけど年月と老化は待ってくれません。自然の摂理を追い越すだけの工夫が必 要だと痛感しました」 アナボリック・ステロイドーその選択が是か非か、彼には判断がつきかねた。ボディビル雑誌を 飾る欧米のトッププロビルダーたちが、純粋なトレーニングと栄養管理だけであの肉体をつくったと は信じられない。それどころか、彼らがドラッグユーザーであることは公然の秘密だった。あるいは この薬を使うしか、自分の理想を実現する方法はないのではないか。

「最初に浮かんだのは、やはり倫理的な問題でした」 高校時代に貧るようにして読んだ書物を再び手にしながら、彼は想いを巡らせる。たとえばゲーテ の『ファウスト」はどうだ。アナボリックステロイドを服用することは、悪魔メフィストフェレスと魂を賭けた契 約をして、この世の快楽を知り尽くそうとしたファウストと同じ選択といえよう。だがファウストの 気持ちを完全に否定できる者はどれだけいるだろう。 あるいは中島敦の「山月記』をどう読むべきか。自尊心のために人喰虎に変化してしまった李徴を、 彼は笑えなかった。文中の「人間は誰でも猛獣使いであり、その猛獣に当たるのが、各人の性情だ」 という箇所を、「飢え凍えようとする妻子のことよりも、己の乏しい詩業のほうを気にかけているよ うな男だから、こんな獣に身を堕とすのだ」の一節を彼は噛みしめた。 はたして人間は、それぞれが使命や天命を持って生まれてくるものなのだろうか。自分はこれまで、 受験勉強やスポーツといった学校教育の枠の中でトップを目指して生きてきた。それはある意味で快 い競争でもあった。努力プラス効率、これを極めたものが受験戦争の勝者だ。不断の労苦を厩わぬ精 神力と、効率を重んじる能率主義が合致したとき目的は達成されるはずだ。しかしこのまま一流会社 に入って、栄達の人生を送ったとしたらー父母はそれを成功者の人生と称賛するだろう。だが自分 の天命がそうだとは、とても考えられない。

ボディビルを知った今は、筋肉が肥大するたびに、新たな自分が生まれるような気がする。ボディビルでは充足を知った時点で筋肉の発達はストップしてし まう。筋肉を肥大させるということは、神の意志や自然の摂理を超越して、人知の及ぶ可能性を探る 行為でもある。これは見果てることのない夢だ。

「日本人ビルダーとしてナチュラルの限界を突きつめる。これは東大に合格するというのと同じだと 思いました。たしかに一定の基準の中では最高の栄誉ではある。だけどそのゴールの向こうに、もっ と大きな目標があるとしたらi井の中の期で終わってしまっていいのか。そこで満足してしまって いいのでしょうか」 この世に生まれ落ちた以上、やがて人は死んでいく。 「悪魔的と言われても、自分は自分のやりかたで目標を達成しようと思いました」 安倍は自分の心境を、芥川龍之介が「地獄変」で描いた天才絵師にも似ていると説明した。自分は 目的のためなら、あえて手段を選ばないという道を選んだ。筋肉が劇的に発達してくれる三十代半ば までに勝負を懸けたい。長生きなどしたいと思ったことはない。太く、短く、劇的に生きてみたい。 月並みな家庭の幸せ、警沢なファッション、グルメを気取った食事:筋肉のためならすべてを捨て 去る自信がある。ボディビルの求道者として生きるためには、良識とは別の倫理が存在するのだ。

だから『地獄変』の主人公を、あの父親を非難できない。もし自分も絵師で彼のような場面に置かれた ら、たとえ迷いはあっても、結局は一人娘を火に掛けてしまうだろう。 「すべては芸術のためーそのためには娘を犠牲にまでできる者だけが、本当の芸術を体得できるは ずです」 日本のボディビルダーたちは、ほとんどがステロイド使用に批判的だが、彼はそれをやっかみと判 断している。

ボディビルは狭い世界だ。有名ビルダーの動向は、いくつかの尾ひれを伴ってすぐに業界を駆け巡る。 どんなサプリメントを使っている、どういうトレーニングをしているか、とりわけドーピング疑惑に 関する話題には敏感だ。

アナボリックステロイドを使っているヤツは乳首が立っている、いや背中に吹き出物があ るからすぐわかるといった調子で、最後は声を落として、だから○○は怪しい、となる。成長ホルモ ンの卓越した効果が瞬かれると、このホルモン剤は腹から注射するから腹部に突起ができるという話 がすぐに広がる。

そういえば××の腹に、という具合に会話は進む。急成長したビルダーやチャンピ オンたちなら、一度はドーピングの風評を立てられたことがあるはずだ。だが、そこには非難の口調 だけでなく、美深望や嫉妬も見え隠れしている。「誤解を恐れずに言うと、アナボリックステロイドに走るビルダーも、ナチュラルのビルダーも同根だと思います。 ナチュラルの中にも心理的なステロイド予備軍は多いんじゃないですか。だってみんな大きくなりた くて仕方ないんですから」 ドーピングに手を出さないビルダーの多くは、サプリメントに助けを求める。プロテインやアミノ 酸、ビタミン剤などはビルダーの世界では特別なものではない。

彼らが欲するのは、もっとマニアッ クなものだ。中でもナチュラル・アナボリック効果、1自然素材の安全な物質でありながら、ア ナボリック・ステロイドのように、著しいタンパク質同化作用を持つという惹句は怪しい魅力を持つ。 ナチュラル・アナボリック効果を謳うサプリメントは、ドーピング検査に抵触しないというのもセー ルスポイントだ。ョヒンべ、スライマックス、シベリアンジンセン、アフリカンヤムなどの薬草類、 ガンマオリザノール、ディべンコザイドなどのビタミンBに含まれる系列、マンガン、ジンク、クロ ムといった微量ミネラル群、これまでも実に多くのサプリメントがナチュラル・アナボリック効果 を宣伝していたが、今では口の端にすら上らないものもある。

これらのサプリメントはほとんどがアメリカ製で、安いものでもひと月使用分換算で4,000円は する。あるミスター日本の常連選手が、年間数百万円もの金額をサプリメント代につぎ込んでいるの は有名な話だ。 もしステロイドに副作用がなく、しかも安価に販売されていたらーおそらく大多数のビルダーが アナボリックステロイドを服用するだろう。

副作用を怖がるのは、生命を懸け、あらゆる非難と偏見にまみれなが らも、肉体を鍛えるという覚悟ができていないからだ。そんな者たちの冷視など、安倍は怖くも何ともなかった。 ステロイド剤は、医師や薬剤師経由でないかぎり入手が極めて困難とされる。薬局も処方等なしで は販売しない。さらに、その使用は厳重な監視と助言のもとに行われなければならない。使用を思い 立ったものの、安倍にはアナボリック・ステロイドを手に入れる方法など想像もつかなかった。 だがその機会は意外に早く訪れた。直接のきっかけは同じジムにいた男だった。 練習を終えロッカールームで着替えていた彼に、ある男性会員が声をかけてきた。何度かジムで顔 を合わせたことはあるが、それほど親しい仲ではない。 「いつも熱心にトレーニングしていますね。

やっばりコンテストに出るつもりなの?」 彼は当たり障りのない返事をした。男はなおも口を開く。 「君だったら才能もあるし、もっと大きくなれるよ。うん、間違いなくチャンピオンになれる。何だ ったらもっと大きくなれる、いいものを紹介してあげてもいいんだけど」 もしかしてーという予感がした。しかし、そのとき彼は返事をためらう。この男が信用できるの か、またアナボリック・ステロイドで本当に大きくなれるのかという不安が残った。この男がそれほ どいい身体をしていないことも、何となくウソっぽさを感じさせた。 男は彼以外のジムのメンバーにも声を掛けているようだった。彼と同じ時期にジムに入会した友人 が先に購入し、ほぼ三か月でその仲間は見違えるような身体になった。 「友人は体質的には恵まれたほうでしたが、ステロイドを使ってさらに大きくなった。

悔しいとか、 焦りというより、やっばり効果があるんだなと確信しました」

国内に出回るステロイド剤は海外からの個人輸入か、日本の医師や薬剤師、薬局からの横流しが 大の供給源とされている。このようにバイヤーがジムのロッカールームでユーザーを開拓するという のも、アナボリックステロイド販売ルートの典型的なパターンだ。それはボディビルジムだけでなく、ごく普通の アスレチッククラブでも行われている。

かつて全国規模のチェーンを持つアスレチッククラブの都内 の施設からボディビルダーが一掃されたことがある。このクラブではドーピング違反でJBBFから スポイルされたり、疑惑を受けていたビルダーたちがトレーニングしていた。この施設のスタッフだ った人の証言によると、ボディビルダー追放の大きな原因として、クラブ内でのアナボリック・ステ ロイド売買があったという。そのクラブへ行くとステロイドが手に入るという噂は、ボディビル界で はかなり有名だった。

現場を押さえはできなかったものの、ロッカールームが売買の温床となってい ることを知ったクラブは、ステロイドユーザー兼バイヤーたちを切った。 最近はインターネットを通じての入手もポピュラーになってきた。法的に禁止されたり規制されて いる薬物も、インターネットなら意外なほど簡単に入手できる。98年まで国内のインターネット掲示板に登場したアナボリック・ステロイドは経口錠剤から脂溶性注射アンプルまで多岐にわたってお り、価格としてはアナドロール100錠が七万円という、とんでもない価格で売買されていた。しか し「ドクターキリコ事件」八年に起こった、インターネットで自殺願望のある人々とコンタク トを取り、毒薬を幹旋していた事件ー以来、国内での露骨なアンダーグラウンド商売は姿を消した。

国内のアナボリックステロイド掲示板にヒットしても「強力バロネス内服液」や「プリズマホルモン錠」といった 回春剤や精力増強剤の販売が目立つだけだ。それぞれの薬には確かにメチルテストステロンが含有さ れているが、筋肉増強剤としての効果を促すだけの薬効はない。それでもドーピング検査前に服用す れば結果は陽性となるから、服用には注意が必要だ。なにしろIOC基準の検査は、二五メートルプ ールにスポイト一満分のステロイドを落としただけでも反応する。

アメリカ人を対象とした筋肉増強剤に関するサイトにはすぐヒットできるはずだ。都内でサプリメントを扱うある 業者はこう説明する。 「今でもアメリカのサイトには、ステロイド剤の広告がいっぱいありますよ。だけど九九パーセント まではニセのステロイドなんじゃないですか。

アメリカじゃステロイドの売買は麻薬売買に匹敵する 重罪ですからね。脂溶性の注射剤を買ったのはいいけれど、中身がゴマ油だったという例ばかりです。 中には本物を送ってくれる業者もいるんですが、それが麻薬取締局のおとり捜査だったという笑えな い話があるくらいです」 アメリカでは、ちょっとした町ならビタミンショップが必ずある。ここではビタミン剤だけでなく サプリメントを広範に扱っている。うまく交渉すれば、そっとアナボリック・ステロイド、を出し てくれるだろう。だがその大部分は、得体の知れないメーカー名がラべルされている。こういう商品 はほとんどが偽物と考えていい。

それでも不正輸入の主なルートがアメリカということに変わりはな い。現地のバイヤーたちは、フェイク商品だけでなく、メキシコやアメリカ国内で作られたアンダー グラウンドのステロイドを扱う。アメリカでの闇ステロイド市場は100億円以上の規模と試算され ている。ボディビルのメッカ、アメリカ西海岸は日本人ビルダーにとっては憧れの地だが、そこで薬 物を体験するケースもかなりの数になる。アジアも隠れた供給源だ。

タイや香港の裏町にある薬局で は、定価の倍も出せば処方等なしでステロイド剤を販売してくれる。 医師や薬剤師に知人を持てば薬物を融通してくれる確率は高い。安倍のかつてのルートもこれだっ た。期限切れのステロイドは薬物卸業者によって廃棄処分されるが、その際に一部が横流しされるケ ースもある。これらのステロイドは期限切れといっても正規商品だ。アメリカでフェイクをつかまさ れることを考えれば、よほど信用できる。正規の薬価の倍以上が実売価格なのだから、売り手にとっ ても効率の悪い話ではない。 副作用 安倍が初めて試したのは国産品だった。

塩野義製薬から販売されていた「アナドロール錠」だ。こ の薬はオクシメトロンに属するアナボリック・ステロイドで、アメリカではシンテクス社から「アナ ドロール%」、パークデイビス社では「アドロイド」という商品名で販売されている。ヨーロッパ系 ではイギリスの「アナポリン」、ドイツ圏では「プレナストリル」という名称が一般的だ。オクシメ トロンは数ある経口ステロイド剤の中でもその効果が強力で、本来の医療目的では重度の悪性貧血患 者に投与される。日本人のステロイドユーザーの多くが「筋肥大効果がいちばん強い経口ステロイド とは聞いているが、同時に副作用も強烈だと知って使わなかった」と証言するほどの薬でもある。阿 倍はそのほかこれまでにミオトロン、テストステロン、プリモボランなど数種類を使用している。

病院側がステロイド剤をどう扱っているかを、ある公立総合病院の医師に聞いてみた。 「アナドロールは九九年四月一日をもって、経過措置品目、つまり健康保険の適用から外されまし た」 だが、これまでの在庫を含め相当数が世に出回っているのは事実だ。 「ウチの病院の場合、アナドロールの納入価格は一錠一○○円以下、だいたい五○円から六○円が相 場でした。アナドロールが経過措置になったのは、薬価が下がりすぎて利益がでない、という単純な 理由からじゃないですか」 このステロイド剤は、再生不良性貧血という白血病の治療のためのタンパク質同化という目的で投与されており、彼の病院では月に二○○錠程度が処方されていた。

現在、この病院はアナドロールに 代わって日本シェーリングが製造する、プリモボランというステロイドを投与している。これも薬価 は二○円から三○円と安い。 「当院の場合は残ったアナドロールを廃棄しました。でも実際には燃えるゴミとして出していたよう です。この薬は薬価があまりに安すぎるので、もし病院職員や問屋の社員がくすねても問題にはなら ないでしょうね。だって経営に影響は出にくいですから」 安倍が最初に、ジムで知り合った闇バイヤーから買ったアナドロールは100錠パックで6,000 円だったそうだから、これは良心的な価格ともいえる。

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