食物繊維の種類

食物繊維 しょくもつせんい dietary fiber

食物繊維(ダイエタリーファイバー)の定義は、人間の消化酵素では消化されない食物中のすべての成分(難消化性成分の総体)となっています。体の構成成分やエネルギーとなることはありませんが、5つの栄養素に続く第6の栄養素としてその有用性が見直され、排泄の促進、有害ミネラル排出、血中コレステロールの抑制、悪玉菌の増殖抑制、急激な血糖値上昇の抑制などの作用があり、糖尿病・高脂血症、肥満や高血圧症などの代謝性疾患に有用と考えられ、さらに、大腸ガンの予防が期待されるなど、腸内環境を整えるためにも必要な栄養素となっています。1日あたり摂取目安量は20〜27gですが、現代では15g程度と不足しているといわれる栄養素のひとつで、動物由来・植物由来・水溶性・不溶性に分類することができます。

食物繊維の種類

食物繊維の種類
不溶性食物繊維 腸管内の水分を吸収して著しく体積を増すことで便の量を増やし、これが腸壁を刺激して蠕動(ぜんどう)活動を活発化、排便を促します。また、繊維自体に水分があるため、便が軟らかくなります。
由来 名称 摘要 概要
植物性  セルロース グルコース 穀類の外皮に多い。細胞壁の主要成分。自然状態においてはヘミセルロースやリグニンと結合して存している。多糖類β-グルカンの一種。食品では、穀類、野菜、豆類に多く含まれ、ヒトの消化液では消化できない。
・ふすま(ブラン)リンゴ、梨、全粒小麦、ナッツ類、豆類、キャベツ、ブロッコリなど
ヘミセルロース 半繊維素 ヘミセルロースとは細胞壁の構成成分からセルロースとペクチンを除いた、不溶性多糖類の総称。
・ふすま(ブラン)、シリアル、無精製の穀類、ビーツなど
ペクチン(不溶性)   細胞壁のセルロースを包む形で、根茎・果実に多い。ポリフェノールの1つとしても知られている。
・リンゴ、ココア、ピーナッツ、トマトなど
リグニン 木質素 植物の骨格を形成する物質のうち、セルロース、ペクチン、ヘミセルロース以外の非炭水化物。化学的変化を受けにくい、全く消化されない、胆汁酸を吸着するなどの特徴がある。
グルカン キノコの主成分 ブドウ糖のみでつくられた多糖類。グルカンにはαとβがあるがβ-グルカンが注目されている:β-グルカンは、抗腫瘍、抗炎症、抗ウイルスなどの効果があるといわれている。β-グルカンには複数の種類があり、キノコの種類や生育条件でβ-グルカンの種類や含有量が異なる。
カラギーナン   紅藻類。カラギナン、カラゲナン、カラジーナン、カラゲニンとも呼ばれ、食品その他の工業でゲル化剤、増粘剤、安定剤などとして使われる。食品に用いると食感が滑らかになる。
アガロース   紅藻類(テングサやオゴノリ)からつくられる寒天の主成分。寒天はアガロースとアガロペクチンをおよそ7:3の比率で含んでいます。寒天は胃酸により一部が分解されて、アガロオリゴ糖ができる。高い化学的安定性を持つ寒天は食品としてだけでなく、研究分野でも広く利用されている。
動物性 キチン・キサトン   キチンはカニやエビなどの外殻に含まれる動物性の食物繊維で消化できません。キサトンはそれを酸に溶けるように化学処理したもの。キサトンは、細菌・脂質・有害物質などを体外に排出します。
水溶性食物繊維 ヌルヌルの粘性が特徴、水溶性食物繊維は腸管内で分解(酵素発酵)される。糖の吸収を遅らせる、コレステロールを吸着・排出、善玉菌のエサとなるなどの作用があります
植物性 ペクチン(水溶性) 果物、野菜に多い。硬い果肉には不溶性が多く、柔らかくなるにつれ水溶性のペクチンが多くなる。柔らかくなった果実にカルシウムを添加するとペクチンの架橋構造を緻密化し、再度硬くなるとのこと。
・リンゴ、バナナ、人参、キャベツ、カリフラワー、柑橘類、いちごなど
グルコマンナン* 植物性粘物質。こんにゃく
アルギン酸* 渇藻類に多い。良質の水溶性食物繊維として知られ腸内で水分を吸収しゼリー状になる。コレステロールを包み込み、体外に排出する働きがある。
フコイダン 紅藻類に多い。コンブの粘り気の成分に含まれる食物繊維の一種で、免疫系に効果があるとされる。(エイズのような免疫不全症やC型肝炎、ガンなどの治療に有効な生理活性物資を体内で増やす効果やアポトーシス、アレルギーの引き金となる抗体の過剰増殖を抑える効果)
グアーガム* マメ科植物グアーから採れるガム。血糖値上昇抑制作用、コレステロール低下作用、便通改善などの効果がある。増粘剤、安定剤、ゲル化剤として広く使われている。
リグニン(水溶性) 抽出物(人工) 天然のリグニンは不溶性でヒトは消化できませんが、キノコ類が持つ白色腐朽菌が水に溶ける「水溶性リグニン」をつくる。水溶性リグニンには免疫によらない抗ウィルス作用や抗酸化作用がる。
デキストリン 人工の水溶性食物繊維 ジャガイモやトウモロコシのデンプン質を原料として加熱・酵素処理し、消化されにくいデンプン分解物を精製・分離した水溶性食物繊維のこと。腸内で食べ物の水分を取り込んでゲル化する。 健康食品をカプセルや錠剤に加工する際に必ず必要となる賦形剤【成分を固める糊の役目】 に利用される事が多い物質。「トクホ」に利用製品多数あり。
マルチトール 人工甘味料 甘味料。甘みは砂糖に近くカロリーは砂糖の半分。甘薯、トウモロコシ等を原料にして麦芽糖から生成される。虫歯の原因にならない甘味料として飴、ガム、飲料などによく使われる。また、化粧品では乾燥肌・敏感肌向けの保湿剤として利用。
動物性 コンドロイチン 魚肉。コンドロイチン硫酸はムコ多糖の一種。「コンドロイチン」はギリシャ語の「軟骨」という意味。「ムコ」はネバネバした粘性物質を意味する言葉。納豆、山芋、オクラ、ナメコ、海藻、フカヒレ、ツバメの巣、スッポン、すじ肉など、植物性・動物性を問わずネバネバしたものに含まれている。
 

不溶性と水溶性の比較:

  不溶性食物繊維 水溶性食物繊維
腸内細菌のエサ ならない エサになり、善玉菌を増やす
腸内のph値 変化しない 腸内が酸性化し、悪玉菌を抑える効果
胆汁酸との結合 結合し、排出する しない
血中コレステロール 変化しない 脂肪を排出し低下する
食後の血糖値 変化しない 糖質の吸収を緩やかにし上昇を抑える
大腸ガン 老廃物などを排出し予防する 変化しない
排便量 増える 増えない
     
※ 注)
  1. 水溶性食物繊維は腸内細菌による発酵で酸が生じ、腸内が酸性化(ph値低下)に傾き、酸性環境は悪玉菌を抑える
  2. 胆汁酸の原料はコレステロール。胆汁酸を吸着・排出することで、食物中のコレステロールを吸収が抑制される

不溶性食物繊維は便の量を増やし、速やかに排便させる:

不溶性食物繊維は便の量を増すため、腸内の滞留時間が短くなり腸の蠕動運動も盛んになるため、便秘の予防・改善に役立ちます。また、腸の蠕動運動が副交感神経を刺激することにもなり、リラックスにつながります。

【偏食・過剰摂取に注意】偏食などにより過剰となった食物繊維が腸壁をキズつけたり、下痢の症状となり有用なミネラルまでも排出することになったり、逆に便秘になることもあります。多くの品目からの摂取や水分補給を心がけましょう。

【水に浮くこと】
1日の目安量として、野菜300g、芋類100g、果物200gを食べると摂取目安量に近くなるようですが、 食物繊維の不足は、水洗トイレでおよそのことが分かります。
・適度の柔らかさがある
・形を保っていること
・水面に浮いていること
(イギリスの医師バーキット)

食物繊維と大腸ガン:

大腸ガンは、動物性食品や脂肪が多く食物繊維が少ない欧米での発症率が高く、穀物や野菜を主体にするアジアなどでは低いものでした。近年の日本では食事の欧米化とともに大腸ガンが増加しており、その原因の1つとして食物繊維の摂取不足が考えられていますが、研究者の間では食物繊維と大腸ガンとの関係についての意見は一致していないようです。このような状況の中、「老廃物を貯めない」「活性酸素でキズつけない」「腸内細菌のバランス」などで腸内環境をつくる、つまり、「便秘しない」「胃腸を強くする」などを心がけましょう。

食物繊維のデットクス作用と注意:

水溶性食物繊維には食物中のミネラルや脂肪をネバネバ成分が包み込んで、体外へ排出する作用があります。このため、重金属(有害ミネラル)や化学物質(食品添加物など)は食物繊維に絡められ、体外に排出されやすくなります。

一方、この作用は私たちに有用なミネラルであるカルシウム、鉄、亜鉛などのをも排出することになり、過剰な食物繊維の摂取がこれらミネラルの欠乏を招きます。骨粗鬆症予防や鉄欠乏性貧血の予防、健康維持などでは、過剰摂取に注意したり摂取時間を2〜3時間ずらすなどの対応を考えましょう。

【水溶性食物繊維】腸管内に水溶性食物繊維があると胆汁や脂肪が絡められ、その多くが食物繊維とともに排泄されることになります。水溶性食物繊維が少ないときは、胆汁や脂肪は小腸で再吸収されます。(胆汁の原料はコレステロール)【参照:コレステロールの働き

【便秘予防・解消なら不溶性】便秘の予防や解消を考えるなら、どちらかといえば不溶性食物繊維の方が適しているようです。海藻類は水溶性食物繊維が強調されがちですが、不溶性も含んでいます。また、リンゴに多いペクチンはそれぞれの性質を持つ成分となっています。

食物繊維と糖尿病や高脂血症:

水溶性食物繊維には摂取した糖質や脂質をくるみ込んで、体外に排出する作用があります。これにより、糖質の吸収が緩やかになり食後の血糖値の急激な上昇を抑えたり、食品に含まれるコレステロールを体外に排出することになります。
糖尿病はインスリン分泌の低下やその働きが弱まっている状態ですが、この状態での糖質の摂取はさらなる血糖値の上昇を招くだけです。インスリンが処理できる分量に応じた糖質の摂取が求められ、基本は糖質の総量を抑えることですが、さらに、毎回の食事では多大なインスリンを一度期に必要としない食べ方が求められます。
高脂血症とは、血液中にコレステロール、リン脂質、中性脂肪、遊離脂肪酸などが異常に多くなっている状態です。これらは摂取する食物に含まれており、体では脂質を原料に生産されています。水溶性食物繊維は食物中の脂質を排出する作用があるため、糖尿病や高脂血症さらには動脈硬化や心疾患の予防として有用な働きをします。

備考

  • 昆布だし:ダシ昆布は洗わないこと。昆布の表面に付いている白い粉はコクとうま味の素。